3188.【ハサミが恐くて…】 ページ38
［潤side］
雅「…やめとく？」
和「…っん、帰り、た…」
雅「歩ける？」
「俺もこっちから支えるから…」
和「…っ、んっ…ありが、と…」
少し前にフラッシュバックした時に、お医者さんが
持っていたものが、注射器ではなくてハサミに見えた
とかで…
和自身も混乱しちゃっててよく分かっていない。
今はカウンセリングで、トラウマとハサミは直接の
関係はないことと、ハサミは恐くないものって
認識するように頑張っているみたい。
でも、すぐにはどうにもならないからね…
そして、それによって通えなくなったのは美容院で。
今日は、さすがに伸びてきてしまったから挑戦して
みることにして美容院の前まで来たんだ。
でもやっぱり、足が震えてしまってお店には
入れなかった。
雅「帰ろう。今はまだ無理しない方がいいよ…」
和「…っ、…ん」
車に戻ってからも「行けそうだと思ったのに…」って
落ち込む和に、雅にぃが優しく声を掛けてくれて
自宅に戻ってきた。
智「おかえり〜、お昼食べよ〜」
和「んん〜…」
智「…ふふ。おかえり」
玄関まで迎えにきてくれた智にぃのお腹に顔を
埋めて甘えてる。
兄貴達は「いいんだよ、ゆっくりで」って。
「髪が伸びても死にはしない！笑」って。
ずっとずっと、そう言って励ましてきた。
だから…
翔「うわ…マジか」
雅「これで躓くとはね…」
智「学校に話してみるか…」
学校の頭髪検査で引っかかってしまったことは
想定外。
だから兄貴たちが策を話し合ってるんだけど…
和「学校には、話さないで、欲し…」
智「…ん？…どうして？」
和「誰にも、知られたくない…」
智「そっか、そっか」
髪の毛を切れないのには、きちんとした理由が
あるから、学校側に話せばOKをもらえると思う。
でも和はそれを拒んだ。
翔「じゃあ、やめよう」
雅「あひゃ！そんな顔しないの。大丈夫だから」
和「…でも」
智「いいの」
和は「我儘だもん…」って涙目になってる。
翔「お前は充分頑張ってるんだから、いいの」
和「…んっ…っ、んっ…んくっ…」
智「泣かないの…」
兄貴たちに抱き寄せてもらって、背中や頭を
撫でられた和はやっと納得してくれて。
学校では先生に注意を受けるたびに『分かった！
明日切るから！』って。笑
日頃の愛嬌のお陰で『もう、お前は！笑』って
注意される程度。
友達にも『伸ばしたいの！』って。
恐怖心が消えるまで、どうにか乗り切ってくれれば…
って、そう思ってた。
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作者名：空
| 作成日時：2019年6月7日 19時
