3179.【3】 ページ29
［翔にぃside］
俺も最初は
吸入器から顔を背けたがる雅紀を前にして
『まだそんなに苦しいのかな…』って心配した。
でも、少しの間様子を見てたら分かったんだ。
吸入が苦手なんだなって。笑
「まーさ…そんなに顔振らないの。智にぃ困ってる
だろ？」
雅「…ん、んん…」
目を閉じたまま、顔を左右に振って逃げ回るから
智にぃが苦笑いしてる。
「なにそんな嫌がってんの」
雅「ん、ん…んっ…」
「やらないと駄目なの。笑」
軽く顔を抑えたら怒ってる。
ただでさえ苦しいのに、吸入を嫌がってバタバタ
暴れるから…
雅「…っ、…けほっ…っ…んっ…」
「ほら…また苦しくなるだろ…」
雅「…っ、んっ…や、だ…っ…」
咳が誘発されて呼吸まで苦しくなって、新しい涙が
ポロポロと頬を伝う。
智「大丈夫だよ、雅紀。落ち着いて…」
雅「…っ、んっ…けほっ…っ…」
吸入器を当てながらも、智にぃが優しく声を掛けて
胸元をさすってくれて。
優しい落ち着いたその声に、だんだんと雅紀の
気持ちも落ち着いていくのが分かる。
「もう終わるから。あと2.3分な？」
雅「…ん」
吸入が終わる頃にはすっかり落ち着いて「吸入の
なにが嫌なの？笑」って俺の質問に「だって
苦しいんだもん…」って拗ねながら答えるまでに回復。
「苦しくても、ちゃんと吸えばその分早くラクに
なるから…な？」
雅「…ん、わかった」
素直にコクコク頷くあたりは雅紀らしくて、
可愛くて。笑
智にぃと顔を見合わせて笑った。
「まだ少し発作の心配もあるし、しばらく安静にして
しっかり治ってから退院な？」
雅「…ん」
そんなに長引かないとこの時は思っていたんだけど…
雅「…っ、…んっ…けほっ…」
「…大丈夫、ゆっくり…ゆっくり…」
風邪を拗らせてしまって、体力の低下が思ったより
深刻だったみたい。
何度も咳き込んで、それが原因で発作を誘発。
雅「…っ、こほっ…っ、ん…っ、や、だ…」
「あ、こら…笑」
先「はは…笑。大丈夫？代わろうか」
「すみません…笑」
やっぱり吸入を嫌がって、必死になって手で払い
退けてくるから、先輩に吸入器を持ってもらって、
俺は雅紀の手を抑えるっていう。
これじゃあ、誰かさんに処置してる時みたいだよ…笑
先「嫌だね、雅紀くん。もう少しね…」
雅「…っ、ん…けほっ…っ…や…」
「落ち着けって…、大丈夫だから…」
興奮するから悪循環。
自分でもよく分かってないみたいで、少しパニック
気味なのかな…と思う。
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作者名：空
| 作成日時：2019年6月7日 19時
