3174.【4】 ページ24
［翔にぃside］
空いてる病室で
休んでいたら、潤を抱えた智にぃと先輩がきた。
智にぃの顔を見たら、やっぱり先に飛び出すのは
謝罪の言葉。
和の傍に、医者としても兄としても居てやることが
できなかった…
そのせいで、先輩も和の傍を離れることになって
しまったし。
先輩は「和くんは薬で眠るから大丈夫。今はお前が
心配だから」って言ってくれたけど…
申し訳なさと情けなさが勝ってしまう。
雅「ごめん…遅くなって…」
智「んーん…そこ座って？」
雅「…ん」
潤をベッドに寝かせたところで雅紀も合流。
コンコンコン…
智「…はい」
医「失礼します」
そこに、和の処置をしてくれていた医師が加わる。
「…」
病室はなんともいえない重苦しい空気でいっぱい。
医師からの説明は、頭の中に全然入って
こなかった。
大事なことだから聞かなきゃ。
聞かなきゃいけない。
そう分かってはいるんだけど、ただ流れていく。
でも、これだけは耳に残ったんだ…
『今日が山場で、覚悟が必要かもしれない』
この言葉が、どんな状況の時に使われるのか
自分が一番よく分かっていた。
だからこそ、重くのしかかってどうしようもなくて…
和が…
和の命が…
消えてしまうのかと…
［雅にぃside］
翔にぃから「かなり大きな発作だから、仕事を早退
してでも、すぐに病院に来て欲しい」って連絡が
きたから…
だから、こうして病院に駆けつけた。
でもまさか、こんな話を聞かされるとは…
智「…」
翔「…」
「…」
先生達が出ていった病室で何も話せない。
和がICUに運ばれてるって聞いたけど、動けない。
『覚悟が必要…』
この言葉だけが、頭の中でグルグルまわってる…
覚悟って何？
そう口に出すのさえ恐くて…
少しでも考えるのが辛くて…
長い長い沈黙。
このままじゃ、どうにもならないって分かって
いるけど、先に進むのが恐くて。
みんなで逃げてた…
でも、こんな時はやっぱり智にぃがお兄ちゃんで。
頼りになる存在で…
智「…俺、忘れてたのかもしれない…」
翔雅「…」
口を開いてくれたんだ。
言葉にしてくれたんだ。
智「いつ、こういう状況になっても、おかしくない
ってこと」
翔雅「…」
智「いや、忘れてたんじゃない。忘れようとして…
忘れたふり、してたんだよね…」
翔雅「…」
智にぃの言いたいこと、分かってしまう。
だって自分も同じだから…
病気の怖さ、発作の怖さを忘れようとしている自分が
いるから。
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作者名：空
| 作成日時：2019年6月7日 19時
