3108.【3】 ページ8
［翔にぃside］
先「駄目だよ。
車椅子使いなさい」
「…っ、でも」
先「でもじゃない。使え」
「…」
看護師に止められるのを制して、歩いてトイレに
向かおうとベッドから立ち上がったところで
先輩に見つかってしまった…
喘息と肺炎で入院したんだけど、その後も呼吸が
全然安定しなくて、すぐにチアノーゼが出るほどに
なってしまって。
それが1ヶ月も続いて慢性呼吸不全って診断された。
一旦は退院していたんだけど、投薬治療をしながら
落ち着くまでは絶対安静で入院になった。
まさか、体調崩してここまでなるとは思わなかった。
先輩は俺が再入院してから、かなり厳しく管理して
監視するようになって。
自業自得といえば、それまでなんだろうけど…
先「担当医の指示に従わないなら、いつまで経っても
退院の許可は出さないからな？」
「…はい」
渋々、車椅子に移動したら看護師も苦笑い。
先輩は「押してってやって？」って指示。
確かに、今の俺は車椅子への移動だけでも息が
上がってしまうから仕方がないけど…
「はぁ…」
看「ふふ…そんな落ち込まないで下さいよ。笑」
弱ってしまった体が嫌で、トイレに向かうために
車椅子を押してもらいながら、ついつい溜め息。
看護師が優しく笑いながら「ちゃんと治りますから
大丈夫ですよ」って。
有難いよね、看護師の存在。
ホッとするのが分かるもん。
「ありがとう。ごめんね、迷惑掛けて」
看「いえいえ、これが仕事ですから。いつでも
押すので遠慮なく言って下さいね。そうじゃないと
また先生に叱られちゃいますから。笑」
「ん、お願いします…笑」
トイレから戻ってしばらく目を閉じて呼吸を整えて
いたら、先輩が見にきてくれた。
先「薬の量、少し減らすから様子見な？苦しく
なったらすぐ押すこと。いい？」
「…はい」
先輩と入れ替わりで、面会に来てくれた智にぃは
「少し良くなってきたみたいだね」って優しく頭を
撫でてくれて、それが嬉しい。
この歳になって、こんなこと言うのは恥ずかしいけど
やっぱ落ち着くし嬉しいんだ…
「…智にぃ？」
智「…ん？」
「…いつになったら、退院できるの、かな…」
不安が募る…
智「先生ね、少し頑張って欲しいって言ってたよ？」
「…ん」
智にぃはベッドに腰掛けて優しく肩を抱いてくれた。
智「無理しないで、周りを沢山頼って、とにかく
安静にしてて欲しいって」
「…ん」
智「それが治る為の近道なんだって」
「…ん」
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作者名：空
| 作成日時：2019年3月25日 20時
