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［雅にぃside］
智にぃのことは
翔にぃから聞いた。
双子が家にいる時には、普段通りに振舞っている
智にぃなんだけど…
「…声、掛けてみる？」
翔「ん、そうだね、お願い。お茶入れてくるわ」
双子が就寝しに部屋に行ってから、仏壇の前に座って
動かなくなってしまったんだ。
翔にぃと様子を見てたんだけど、もう1時間以上
経つから…ね。
「…智にぃ？」
智「…」
「…智にぃ？」
智「…ん？」
「こっちでさ、お茶でも飲もうよ。翔にぃが入れて
くれるって」
智「…ん」
手を差し出したらギュッと握ってくれるから、
その手を握ってリビングのソファーへ。
しばらくしたら肩を震わせて静かに泣き出した…
智「…っ、ん…、んっ…んくっ…」
「…寂しい？」
智「…んっ、んくっ…ん、さ…しい…」
寂しいって…
「翔にぃ？俺、お茶の続きやるからさ、智にぃの
ところにいってあげて？」
翔「ん、さんきゅ」
こういう時は、やっぱり俺より翔にぃじゃないかと
思って。
ほぼ出来上がっていた紅茶に、ミルクと砂糖を少し
加えてリビングに運ぶ。
ソファーに座った智にぃの肩を翔にぃがしっかりと
抱いてあげていた。
翔「雅紀、ありがとう。…飲む？」
智「…っ、ん…」
さっきより少し落ち着いた智にぃは、カップを支えて
もらいながら紅茶を飲んでくれた。
それでもなかなか、頬を零れる涙は止まることは
なく…
智「…っ、ん…、あいた、いよ…」
翔「ん、そうだね。会いたいね…」
智「…っ、んくっ…さ…しい…」
翔「寂しいよね…」
ポツリポツリと呟かれるのは『会いたい』『寂しい』
って言葉。
きっとさ、大事な人を失った人は、みんなが心の
どこかに同じような思いを抱えているんだと思う。
智にぃが今回、そんな思いを口に出せているのは
いいことだと思うんだ。
一人で抱え込むよりずっといい。
特に智にぃは、頼りたい時に誰にも頼れず…甘えたい
時に、逆に弟たちに甘えられる立場で…
そうやって過ごしてきたと思うから。
たまにはこうやって感情を溢れさせて、俺らの前でも
本音を口にしたり、泣いたりしたっていいと
思うんだ。
しっかり優しく肩を抱きながら、智にぃの言葉に
寄り添っている翔にぃも、きっと同じこと思ってる。
心が少し退行したことで、本当の気持ちも伝えやすく
なっているんだと思うし。
智「…っ、ん…んくっ…ん…」
翔「いいよ、無理しなくて…」
安心して、全部ぶつけてね。
翔にぃも俺も、受けとめるよ。
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作者名：空
| 作成日時：2019年3月25日 20時
