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［和side］
恐いことも痛いことも
いっぱいあったけど…
駆け付けてくれた先生も看護師さんも優しくして
くれて、少しずつ気持ちが落ち着いた。
でも…
「…っ、…りたく、ない、のら、ない…っ、んくっ」
藤「大丈夫だよ、和也くん。恐くないからね。
先生達も一緒に乗るから」
ヘリコプターなんて乗りたくない…
知らない病院も行きたくない…
あんまり我儘言ったら薬を注射されて眠らされて
しまうかもしれなくて…それは嫌だけど。
でも冷静な判断なんて出来なくって…
「…っ、んっ…んくっ…や…、のら、な…」
体はストレッチャーに固定されてて動かせないから
とにかく泣き叫んだ。
さっきまで優しく声を掛けてくれてた先生が
一生懸命に説得しようと優しく宥めてくれるけど
なかなか耳には入ってこなくて…
そしたら、もう一人の先生が傍にきて言ったんだ。
「和也くんはよく頑張った」って。
さっきまで、ほとんど声を掛けてこなかった先生。
その先生が俺の視線をバッチリ捉えて「もう泣くな」
って。
ビックリしたのもあって、耳にスーッと声が入って
きたのが分かった。
藍「これに乗れば数分で病院だ。そこに翔先生も
いてくれる」
「…ほん、と？」
藍「あぁ」
「…っ、んっ…しょ、…んせい、とこ、いきたい」
藍「分かった」
翔先生に早く会えるなら少しくらい我慢しようって
思えたんだ。
こんなに落ち着けているのは、この先生達が優しく
フォローしてくれたからだな…って。
冴「少し揺れるけど大丈夫…」
「…ん」
離陸の時、看護師さんが優しく声を掛けてから
手を握ってくれた。
藤「ヘリはね、すごいんだよ！山だって川だって
へっちゃらなんだから！」
「…ふふ」
ずっとずっと明るく声を掛け続けてくれる先生。
藍「…苦しいとこないか？」
「…ん」
この先生も…
口数は少ないけど、本当はすごくすごく優しい先生
なんだって、さっき知ったから…
翔「かず！！」
「…ょ、にぃ…」
すぐにストレッチャーに駆け寄ってきた翔にぃに
伝えたんだ…
『先生達、恐くなかった』って。
そしたら翔にぃ、目をまん丸にしてビックリして。笑
そりゃ、そうだよね。
きっと、薬で眠らされてるか、パニックで翔にぃの
ことも分からないくらい泣き叫んでるかの
どっちかだと予想してたよね。
でもね、この先生達は違ったの。
恐怖症のこと理解して待ってくれたから…
翔にぃは先生達に、深く頭を下げたまましばらく
動かなかった。
END
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作者名：空
| 作成日時：2018年9月6日 18時
