2999.【4】 ページ49
［藍沢先生side］
和也くんの体には
手術の痕や穿刺痕があった。
古いものから、新しいものまで沢山。
長い闘病生活を送っているんだということが分かる。
恐怖症の原因もそれなのか…
和「ん…んん…ん〜…」
「…もう終わった」
腰から下が動いてしまわないように、太ももの辺りに
片足をのせて体重をかけつつ、麻酔の注射針を抜く。
藤「頑張ってるよー、えらいね。終わったら、
呼吸ラクになるからねー」
和「…ん、んっ…や…、しょ、…んせ…」
藤「翔先生にも褒めてもらえるねー」
藤川は和也くんを沢山褒めて、プラスのことだけを
伝えて、励ましてくれる。
ここからは、さらに痛みも出るし患者にとっては
辛いところ。
俺は藤川と冴島にだけ、処置を始めることを伝えて
器具を持った。
藤川が和也くんを抱きしめるように、さらに強く
抑制したのを確認して、俺も和也くんの太ももに
のせた足に、しっかりと体重をかける。
和「…っ、んっ…や…、も…、しな、い…」
藤「大丈夫…和也くんは強いから」
この状況が不安を煽ってしまうことは分かって
いたけれど…
和也くんの心のフォローは、藤川と冴島に任せて
俺は淡々と処置を進める。
和「…っ、あっ…、ん〜…、や…」
藤「ちょっと痛いねー、でも恐くないからねー」
和「…っ、んっ…んん…」
藤「やっぱり、和也くんは強いね〜」
藤川が声を掛けてくれて、冴島も体をさすったりして
安心感を与えてくれる。
和也くんは痛みには割と強い方なのかもしれない。
和「…ん、んん…んっ…」
藤「ほら、もう終わった」
恐怖からか、体は震えていたけれど俺に抑えられた
足を動かすこともほとんどなかったし。
「…もう終わりだ。えらかったな…」
和「…っ、んっ…んくっ…」
手袋を外して、溢れる涙で濡れている頬を、タオルで
そっと拭く。
和「…っ、ん…」
藤「頑張った、がんばった…」
和「…ん、んくっ…」
少し落ち着いてきたかな…というところに
ヘリが怪我人の搬送を終えて戻ってきたと連絡が
あった。
よかった…次は和也くんの番だ。
「ストレッチャーに乗せよう」
藤冴「はい」
藤「もうすぐ、お兄さんに会えるからねー」
和「…ょ、せんせ…、…っ、んくっ、のら、な…」
お兄さんには会いたいのだろうけど、ヘリが恐い
みたいで移動を始めたら頑なに嫌がる。
せっかくここまで鎮静剤なしでやってきたから
できれば眠らせたくはないけれど…
和「…っ、んっ、や…」
どうしようか…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3700人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2018年9月6日 18時
