267.【医師恐怖症】 ページ17
［翔にぃside］
智「お世話に
なりました」
医師達に頭を下げる
智にぃの後ろに
ピタッとくっついて
姿を隠している和は
ガタガタ震えている…
「ご迷惑お掛けしました」
続いて俺が頭を下げたら、医師も
看護師も口々に「早くよくなると良いわね」
「協力できる事はするからな」って
励ましてくれる。
俺と智にぃは何度も頭を下げて
病院を後にした。
和がこんなんになってしまったのは
3日前、学校の帰りに倒れて
救急車で運ばれてからだ。
救急隊員の話しによると、
脱水症状が酷く、貧血の症状も
出ていたけれど、救急車に乗った直後に
意識を取り戻したとのこと。
意識が戻った和は救急車の中で
ガタガタ震え出してしまったそうだ。
しかも、病院に和が到着した時
俺はオペ中で、連絡を受けた智にぃも
まだ到着する前で…
救急外来の担当だった医師や看護師が
和の処置をすることになった。
もちろん、尖端恐怖症だということや
病気の治療中だということなどは
保険証と一緒に身に付けているカードに
すべて記載されているから、
救急車に乗せられてる時点で把握済みだ。
だけど突然、救急車に乗せられたり
慣れない救急外来に連れてこられたり…
周りに知っている人が
1人もいない状況で始まってしまった処置…
こんなに悪条件が重なったらパニックに
なるのは当然で、俺らでも
手に負えなかったかもしれない…
結局、押さえつけられ鎮静剤を打たれて
眠らされた後、処置を受けたそうだ。
俺がオペを終えて駆けつけた時には
智にぃのＴシャツを握りしめた和が
ベッドで寝息を立てていた。
ホッとしたのも束の間、
目を覚ました和の状態が
普通じゃないのは誰が見ても一目瞭然で…
体をガタガタ震わせて泣き始めた和は
俺から必死に逃げて意識を飛ばした…
悪条件での処置が重なったことで極度の
医師恐怖症に陥ってしまったようだ。
病院にいては、回復が難しいと
判断した俺らは、最低限の治療だけ入院して
受けさせ家に連れて帰ってきた。
車の中で震えが止まって落ち着いた和は
嬉しそうに家に入っていく。
潤「かずー、おかえりなさーい！」
和「ただいまー！」
仲良く並んでテレビを見始める2人。
こうやって後ろから見ていると
少し前と何も変わらない気さえする。
けれども俺が、体調チェックをしようと
手を伸ばした瞬間、前までとは
状況が変わったことを
嫌でも思い知らされる…
ガタガタ震えて泣き出す和。
必死に逃げようとする姿に
俺らの心は痛んだ…
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作者名：空
| 作成日時：2012年12月30日 18時
