2910.【4】 ページ10
［翔にぃside］
夜中の連絡で
少し驚いたけれど…
「…落ち着いているなら、よかったです」
先「ん、傍にいてやりな」
医局で先輩から話を聞いて、雅紀が割と落ち着いて
いると知って少し安心。
病室で春亮さんとバトンタッチした。
「…まーさ？」
雅「…」
「…少し休もうよ、疲れちゃう。な？」
雅「んん…」
先輩が言った通り、雅紀はベッドに足を戻すのを
嫌がる。
まだ話をする気もないみたいだ。
でも、引き継ぐ時に春亮さんと廊下でちょこっと
話した時に聞いたんだけど、雅紀は春亮さんに
「忙しいのにごめんなさい」って謝ったみたい。
俺が到着するまで、ずっと傍にいてもらって
申し訳なく思ったのかもね。
こういう状況でも、まだ相手を気遣う余裕があるなら
大丈夫そうだ。
どこまでも優しい雅紀らしいや。
「…一緒にベッド上がろう。何も話したくないなら
それでいいから…な？」
雅「…ん」
あんまり納得いってなさそうな顔してるけど。笑
でもさ、先輩も言っていたけど体が熱い。
多分体温上がっていると思う。
だから、少しでも休んで欲しいなって。
「リクライニング上げる？」
雅「ん、んん〜…」
「…なーに。笑」
顔を覗き込んだら、手で押し退けられた。笑
落ち込んだ泣きそうな顔しちゃってさ…
いつも100%以上の笑顔を向けてくるから、雅紀の
こういう姿は正直堪える。
ベッドのリクライニングを少し上げて、俺も隣に。
ちょっと狭くて、俺は雅紀の方を向いて横向きに
寝転ぶカタチになった。
そしたら、顔を見られるのが嫌なのか、腕を
のせて顔を隠してしまう。
「長い入院で不安になるよな…」
雅「…」
頭に触れながら、少しゆっくり話をしてみる。
雅紀はちょっとずつ、俺の言葉に頷いたりして
反応を示すようになってきた。
「…帰ろうと思った？」
雅「…」
「…ん？」
雅「…だって…っ…」
小さな雅紀の声…
言葉に詰まったのか…顔を隠した腕の隙間から
涙がポロポロと頬を伝いはじめた。
しばらく黙ってそのまま頭を撫で続けて、今度は
その手でそっと胸元をさする。
不安な気持ち、少しでも減らしてやれたら…と
思うから。
体調が良くならなくて、入院が長引けば誰でも
不安になるもんね。
「…大丈夫、必ず治るから」
雅「…っ、…んと？」
「ん、ほんと。約束する」
雅「…ん」
コクン…と頷いた後、口元の力が少しだけ抜けた
気がした。
また元気に思いっきり笑えるように、もうちょっと
頑張ろうな。
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作者名：空
| 作成日時：2018年7月3日 19時
