2920.【5】 ページ20
［和side］
どうしてこんなに苦しいの…
ほんとは注射は恐くて嫌いだからしたくないけど
この苦しさと痛みから解放されるなら…って思う。
それなのに、翔にぃが「駄目」って。
「…ん、んん…ん…」
雅「さすってるからね…力抜いて大丈夫だよ」
「…んん…ん…」
熱があって頭が重くて、体も辛い。
それに加えて胸も痛くって、息を吸うのが苦痛。
「ん…んん…んー…」
潤「大丈夫だからな…」
我慢しようにも声が漏れてしまって…
そんな俺の傍に、必ず誰かがいてくれる。
早朝でも真夜中でも時間を問わず…
それがどれだけ心強いか、嬉しいか。
それはね、ほんとにちゃんと感じてるんだけど、
行動とは伴わなくて。
苦しさについていけなくて我儘を言ってしまう…
「…っ、んっ…んん…」
翔「頑張って飲もう？…な？」
「…っ、んくっ…いらな、い…注射、にし、て…」
飲み薬なんていらないもん。
辛くて目を開けられないから、手を振りまわして
薬を飲ませようとする翔にぃを追い払う。
智「かーず…注射はしないの。薬飲んで治そう？」
「…っ、んくっ…やだ、治らない、もん…」
智「大丈夫…治るよ〜」
脇に智にぃの腕が入ってきて体を起こされる。
起きたくなんてないけど、そんなに大きく抵抗する
ことは出来ないから、グッタリと体を預ける。
智「和の担当医は優秀な翔先生だもん。今までだって
翔先生が治してくれたでしょ？」
「…っ、ん…でも、注射もしてくれ、た、もん」
智「そうだねぇ、かず。必要な時は、和が嫌がっても
注射してくれたよね…」
「…ん」
そっか…って。
苦しくて沢山のことは考えられなかったけど、
智にぃの言葉が少しだけスーッと入ってきた気が
する。
「…っ、また、治して、…っん、…れる、の？」
智「んふふ…もちろん」
後ろから智にぃがギューって抱きしめてくれて
「な、翔？」って。
そしたら今度は翔にぃが正面に座り込んで、ほっぺを
ギューって潰しながら「もちろん！」って。
それでもやっぱり、しばらくは痛くて苦しいのは
変わらなかったから「注射がいい」って泣いて
しまうこともあったけど…
雅「んふふ…熱下がってきたね」
潤「よかったな」
みんながずっと優しく看病してくれた。
元気になってきてからは、自分から「注射して」って
頼んだなんて信じられないくらいで。笑
「やめろ！やんなや！」
翔「…もう。笑」
採血検査で猛抵抗してしまうくらい。
これがほんとの俺だもん！笑
END
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作者名：空
| 作成日時：2018年7月3日 19時
