5人で生きてゆく…part58 (ページ7)

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2857.【潤の拒食症】ページ7

［潤side］

『食べたくない』

『痩せたい』

そう思うようになったのは、クラスメイトから
言われた、ほんの些細な言葉だった。

『お前はいい筋肉あっていいよな、和に少し分けて
やれよ』

『お前のその食欲、和に分けてやれよ』

どちらも、普段はそんなに絡みの無いクラスメイト
から言われた言葉。

悪気がなかったのは分かってる。

和のことを心配するからこその言葉だってことも
分かった。

でも…

『俺ばっかり元気な体になっていってしまう…』

このままじゃ、駄目だと思ってしまったんだ。

兄貴達のように、和のことを背負ったり、時には
抱き上げたりしたい。

そんな思いで筋トレをして筋肉を鍛えたいと思って
いたけれど…

どれも自己満足か…と、ふと気が付いた。

そうなったらもう、食べるのが恐くなった。

その思いはどんどん強くなる…

俺は和の分まで食べてしまっていたのではないか。

和が痩せてしまったのは、俺のせいじゃないか。

日に日に増してくる自分を否定する気持ち。

事実ではない思い。

完全なる思い込み…

でも、今の俺はそうは思えない。

みんなにバレないように、茶碗に盛られたご飯を
減らしたり、お弁当を残して捨てたりした。

［翔にぃside］

数日前、智にぃから「潤のことで気になる行動が
ある」って告げられて。

雅紀と2人で「気をつけて見てみる」って返答した。

ここ1週間くらい、潤は夕方になるとランニングに
出掛けているらしい。

「筋トレ」と説明したらしいけど、お腹が空いている
はずなのに、茶碗に盛られたご飯をこっそりと釜に
戻しているんだとか。

それだけじゃなくて「お弁当のおにぎり1つ、
減らして」と頼んできたり、智にぃが「お弁当
何が美味しかった？」と問い掛けても「んー、
全部」と空返事だったりするらしい。

みんなで揃っての夕食。

智にぃから言われたことを頭に入れて、少し
気を付けて潤の行動をチェックしていたら…

潤「俺がご飯運ぶ～」

智「ん、ありがとね～」

味噌汁を運び出す智にぃと交代でキッチンに入って
いった潤。

動きを追っていたら、炊飯器の近くで何やら
やってる。

しばらくして、トレーにのせられた茶碗のご飯は
潤のものだけが半分以下に減らされていた。

テーブルに並べられてしまうと、あまり目に
つかない。

いつも、和の食欲ばかりに気がいってしまっていた
自分。

反省しなきゃな…と。

食欲がないのか、食べたくないのか。

どちらにせよ、探る必要がありそうだ。