2899.【5】 ページ49
［潤side］
和が昏睡状態に陥って
5日が過ぎた。
自分で呼吸しているけれど…
意識なく眠っている和はお人形さんみたい。
色白な肌にフサフサの柔らかい髪の毛。
少し細っそりした頬。
そっと手で首元を触っているところに、翔にぃが
「お、潤きたか！」って。
翔「聞かせてやった？」
「ん、さっき3回も！」
翔「はは！3回も？」
「うん！笑」
毎日あらしの動画を撮影して、和の耳元で再生して
やってるんだ。
あらしね「和に声聞かせてあげて？」ってスマホを
向けると、一生懸命吠えるの。
散歩の時は病院の方に行きたがる。
だから「今は屋上に来れないから会えないんだよ」
って説明するの。
「でももうすぐ会えるから」ってことも忘れずに
伝えるけどね。
翔「3回も聞かされたら時期に起きるな。笑」
「くははっ、だよね…」
簡易着を捲って聴診器を当てている翔にぃの腰に
ギュッと抱き付く。
翔「ちゃんと眠れてる？」
「ん、いっぱい」
翔「よしよし、偉いな」
背中に腕を回して撫でてくれる大きな手。
翔にぃは今、病院に泊まりが多い。
でも、俺も夜以外はICUで過ごしているから
翔にぃとの時間はいっぱいあるんだ。
だから寂しくはない。笑
智「またくっ付いてる〜」
「んふふ…いーんだもん！」
お湯を用意しにいっていた智にぃが戻ってきて
からかってくるから、さらにギュッとしがみ付く。笑
翔「いいんだもんな〜」
「んっ♪」
智「んふふ…」
きっと和は「俺も〜」って叫んでるはずなんだ。
だって俺よりも甘えん坊さんじゃん。
こんなこと言ったら怒るかもしれないけど。笑
「ねぇ、かず？和が起きないなら、智にぃのことも
翔にぃのことも独り占めしちゃうからね〜？」
翔「はは！独特だな！笑」
「くはは！」
だって和にはこれが一番効くはずだもん。
だから和の体を、智にぃと翔にぃと拭きながら
何度も言ってやるんだ。
「起きなかったら、もう甘えられないからな」って。
翔「色白だよな〜、和は。女の子みたい。笑」
智「ふふ…そんなこと言ったら怒るよ？笑」
翔「はは！」
こんな状況でも、こうして笑っていられるのは
和が戻ってきてくれると心から信じることが出来て
いるから。
俺がそう信じられたのは兄貴たちの存在が大きい。
智「爪も切ろっかねぇ」
翔「ん、お願い」
爪もね、ちゃんと伸びるの。
和の体はちゃんと生きてるよ。
病室に響くパチン…パチン…って心地よい爪切りの
音。
和にも聴こえてるかな…
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作者名：空
| 作成日時：2018年4月10日 17時
