2898.【4】 ページ48
［雅にぃside］
智にぃと翔にぃが
家に帰るために病室から出ていった後も
潤は和の足に縋って沢山泣いた。
「どうして和ばっかり辛いの…」って、何度も
繰り返しながら…
「そうだよね…」って言いながら背中を撫でて
落ち着くのを待つことしかできない俺。
情けなくなって…そしたら先生が「乗り越えるには
5人の力が必要だよ」って、肩をさすってくれた。
顔を上げたら優しく笑う先生がいて…
先「雅紀くん達兄弟のこと、すごく大事だから。
だから諦めずに5人で乗り越えて欲しい」
「…ん、ありがとうございます」
体からスーッと力が抜けていくのが分かる。
和の為にできること。
潤の為にできること。
自分でしっかり探していかないとって思えたんだ。
「潤…信じようね。俺も信じるから…」
潤「…っ、んっ…んくっ…んっ…」
もちろん今すぐには「うん」って返事は返っては
こないけれど…
潤「…んっ、ん…」
次第に泣き方が落ち着いてきて。
それからは、ただただ和の足にくっ付いて、傍を
離れず。
数時間が過ぎて、眠ったみたいだ…
そこに智にぃと翔にぃが戻ってきた。
智「お腹空いてない？」
「…ん、空いてない…」
正直ね、分かんない。
でも智にぃが「ちょっと休憩しておいで。
翔お兄ちゃんと。笑」って。
お茶とパスタが入った紙袋を受け取って…
翔「ほら、いくぞ？」
「…ん」
翔にぃに手を引かれてICUを出て屋上へ。
「暑いね…」
翔「こっちまだ涼しい方だよ。東京は30°超えだって
天気予報で」
「そうなんだ…もう夏だね」
翔「だな。笑」
「…またキャンプ、行けるかな…」
翔にぃが眉毛を下げて少し困った顔して…
翔「ばーか、行けるよ」
「あひゃ…」
優しく笑って…「無理して笑わなくていいよ」って
肩を抱いてくれる。
さっき『自分にできることを探して頑張る』って
決心したばかりだったのに、涙が溢れる…
和のことを思うと苦しくて堪らないんだもん。
翔「…落ち着いた？」
「…ん」
でも、ひとしきり泣いたら落ち着いた。
翔「食う？」
「…ん、もらう」
翔「もう泣かない？笑」
「ん、泣かない。あひゃ！」
今度の笑顔は無理して作った笑顔じゃないよ。
「ありがとう」って翔にぃに伝えて「翔にぃのお陰で
ちゃんと前向ける」って言ったら…
翔「俺も、智にぃに助けられたから」
「…そっか」
やっぱり、先生の言った通り、5人で乗り越えるのが
いいね。
頑張ろう。
この5人なら…そう思える。
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作者名：空
| 作成日時：2018年4月10日 17時
