5人で生きてゆく…part58 (ページ38)

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［先輩side］

38℃だった雅紀くんの
熱はその日のうちに39℃を超えた…

雅「…っ、…んっ…おぇっ…」

翔「ん、上手。出しちゃえ、出しちゃえ…」

激しい吐き気に襲われて、眠ることもままならない。

投薬治療のこと、副作用のこと、説明はしたけれど
こんな状況だし、どこまで理解できているのか…

雅「…っ、おぇっ…水、ほし…」

智「ん、待ってね…」

口の中が気持ち悪いから水を欲しがるけど、水を
含めばまた吐き気を誘発してしまう。

雅紀くんを含め、みんながそれを分かっているけれど
今は少しでも希望に添えたら…と。

雅「…っ、んっ…おぇっ…っ…」

翔「冷やす？」

雅「…ん、頭、痛い…」

頭痛も酷くて「割れそう…」って顔を歪めてる。

和くんと潤くんはベッドの両サイドを定位置に
ほとんどそこから動かずに、手を握ったり
肩の辺りに顔を押し付けたりして甘えてる。

雅紀くんのことを励ますんじゃなくて、甘える姿に
思わず笑ってしまう。

でも、それが雅紀くんにとっていいみたい。

辛い状況でも、守るべきものをしっかり見据えてる。

少しでも副作用が落ち着くと「ごめんね、頑張るから
待っててね」って声を掛けてあげながら、2人の
頭を撫でるんだ。

すごいなって思ったよ…

雅紀くんの強さも、雅紀くんを慕う双子くんたちの
力も。

［翔にぃside］

雅「…っ、んっ…グルグル、する…」

「目、閉じてごらん。大丈夫…」

智「みんないるからね…」

雅「…っ、ん…こわ、い…」

目眩に襲われて、座っていることもできなくて
グッタリ…

でも、目を閉じることを恐がるんだ。

「また暗闇に一人になるのが恐い…」って。

「大丈夫…もう一人にしないから。な？」

雅「…ん、んん…」

双子がしっかり手を握って「いるよ」って言いながら
自分のほっぺに雅紀の手を当てる。

「よかったな、雅紀。…大丈夫だろ？」

雅「…ん」

いつまでもグルグルと目が回った状態だと、数分前に
せっかく落ち着いたばかりの吐き気、またぶり返して
しまい兼ねない。

小さくだけど返事をしてくれたから、俺の手を雅紀の
目の上にのせて、光を遮る。

高熱だというのに、貧血気味で青白い顔は冷たい…

高熱、吐き気、目眩、貧血。

こんなに副作用が重なって参らない人がいるのか…
って思うけど。

雅「これが…元気にしてくれる薬だもんね…」

先「ん、そうだね」

先輩がカテーテルから薬を追加しにきても嫌な顔
一つせず、むしろ感謝してる。

すげぇよ、雅紀。