2887.【5】 ページ37
［智にぃside］
新しい投薬治療が決まって
さっそく午後から準備。
まだ入院が続きそうだから中心静脈にカテーテルを
入れて、栄養を摂れるようにするらしい。
ICUに先生と翔。
俺らは少し離れたところ。
和が見たら恐がるし…ってことなんだけど、傍を
離れるのは心配らしく、ICUからは頑なに出ようと
しなかったからこういうカタチになった。
雅紀の頑張りの第一歩だし、みんなで見守るのも
悪くないよね。
先「雅紀くん、ちょっと寒いかもしれないけど
ごめんね…」
翔「先生がすぐ終わらせてくれるからな…」
先「ばか！変なプレッシャーかけんな！笑」
翔「はは！」
信頼し合っているからこその2人のやり取り。
先生の声も言葉も、雅紀に触れる手も…どれも
とっても優しくて。
先「ちょっと痛いからね」
翔「少しだけ我慢。な？」
翔も終始、優しく声を掛けてあげていた。
俺にしがみ付くようにして怯えていた和の体からも
いつの間にか力が抜けた。
準備も順調、雅紀の容態も変わらず。
翌朝から投薬が始まった。
ベッドサイドでみんなで祈る。
雅紀の力を信じて見守る。
そしたらさ…
先「すごいね…雅紀くんも、みんなも…」
「…っ、ありがとう、ございます…」
投薬を始めて2日目に、俺らの願いは届いたんだ…
［潤side］
瞼を少し動かした雅にぃ。
みんなで体に触れながら声を掛けたら、少しだけ
目が開いた。
翔「…まさ、分かる？」
雅「…ん」
まだ声は出なくて、喉が微かに音を立てた感じ。
頷くことも出来なかったけど、雅にぃの目が
俺らを捉えているのが分かる。
真っ先に和が泣きながら飛び付いて「助けてくれて
ありがとう」って。
雅にぃは長くは目を開けていられなくて、閉じて
しまったけれど、瞼が動くのが分かる。
この状況、きっと頭の中でいっぱい記憶を辿って
いるんだろうね…
翔「ゆっくりでいいよ…全部思い出せなくても
大丈夫だからな」
雅「…ん」
先「ずっとみんなが傍にいてくれるから」
先生も優しく声を掛けてくれて「雅紀くんの担当医は
先生だから、我慢しないで何でも言ってな？」って
頭を撫でてあげてる。
「まさにぃ…」
智「んふふ…」
俺も雅にぃの手を捕まえてスリスリ…
みんなで「待ってたよ…」って伝えたら、ほんの少し
口角を上げた雅にぃは、そのまま眠りに落ちる。
先「副作用、辛いと思うから。覚悟してね…」
智翔「…はい」
先生の言葉通り、次に目覚めた雅にぃを、副作用が
襲った…
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作者名：空
| 作成日時：2018年4月10日 17時
