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［雅にぃside］
和の表情の変化は乏しくて
発する声も小さいし、消えてしまいそう。
だけど、和はきっとまた笑ってくれる。
生きたいと思うはず。
そう信じて、俺らは和の傍にいて、心に寄り添って
毎日を過ごした。
和「…っ、ん…、んくっ…んっ…」
翔「…ごめん。無理矢理で嫌だったな…」
和「…んっ、…ん、んくっ…」
翔「よしよし。もうおしまい」
点滴の刺し直しを嫌がって猛抵抗したから、先生と
看護師さん達も加わって抑制して処置したんだ。
翔にぃが胸元をさすって落ち着かせてる間に
先生がグルグルと包帯を巻いていく。
今回は抜いちゃったんじゃなくて、漏れちゃった。
だから和は「どうせまた駄目になるからいい」
「弱い血管だから、もういい」って処置を拒否。
でもね、頑張れた。
先「ゆっくり休んでね、お疲れ様」
翔雅「ありがとうございました」
先生も優しく頭を撫でてくれて…
周りの人達の愛情を沢山、たくさん感じてるはず。
翔にぃが根気強く胸元をさすって、和の心を
落ち着かせてあげてから…
翔「よし、そろそろ行くか！」
「着いたって？」
翔「ん、着いてるって！」
「やったね、和！」
『嬉しい』とも『楽しみ』とも言わない和を
車椅子に乗せて、ダウンコートに膝掛けでしっかり
防寒。
体調が良い日は外に連れ出して、あらしに会わせて
あげることにしてる。
『ウォンッ！！』
公園に行けば、和を見つけて駆け寄ってくるあらし。
『ウォンッ！ウォンッ、ウォンッ！！』
小さな体で、嬉しさを表現するあらしを和は手袋を
した手で、しっかりと抱き締める。
だけど、その目はいつも虚ろなんだ…
それでも俺らは、諦めない。
和のことを愛してるって、必要だって沢山伝えて
生きるって楽しいよって。
そしたらね、そしたらついに…
和「…あらし、は」
智「…ん？」
和「…おれ、を必要と、してくれてる、のかな…」
あらしを腕の中に抱き締めたままの和が、そう
呟いたんだ…
智「もちろんだよ、和。あらしは和のこと大好きで
毎日会えないと寂しがるんだよ？」
和「…ん、んくっ…」
それからポロポロ涙を零して「にぃ、達も？」って。
智「もちろん」
みんなで車椅子を囲んでギュッと抱きつく。
人は一人では生きられない。
大切な誰かの為に生きて、それが生きがいになって
自分の生きる力になる。
その日、和は俺らの真ん中で…
『んふふ…』
久しぶりに笑顔を見せてくれた。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年11月17日 22時
