2627.【4】 ページ27
［研修医side］
金網のドアに
南京錠をかけて屋上を出る。
南京錠の鍵は警備室にあるから、取りに行って
すぐに開けるつもりだった。
だけど途中で救急のヘルプに呼ばれてしまって…
交通事故で多数の怪我人が運ばれてきて
指示に従って動くことで必死だった。
医「お疲れ様。上がっていいよ」
「はい、お先に失礼します」
ヘトヘト…
医局に戻ったら、翔先生と仲の良い先輩医師が
いて「お前の指導医どこ行った？」って。
ハッとした…
でも、もう他の人に気が付かれて出てきているに
違いない。
そしたら鍵をかけたのが俺だと気が付かれることは
まず無いから、誰かのミスってことで済んで
いるだろうと思って。
「診察後は屋上にいましたけど…」って言葉を
濁した。
先「あぁ、そっか。雷雨とひょうだったから、
さすがにもういないだろ。笑」
「えっ…」
余裕がなくて気が付かなかったけど、そんなに
天気悪かったんだ…
でも、それなら誰も屋上に行っていないんじゃ…
そしたら誰にも気が付かれていないかもしれない。
あそこから出られずに雷雨とひょうの中
濡れていたとしたら…
時計を見て血の気が引いていくのが分かる。
もう2時間以上…
先「…どうした？」
「実は…」
叱られるとか、バレるとか、もうどうでも
よく思えて。
先輩医師に早口で全てを話した。
先「屋上確認してくるから。鍵もらってこい！」
「はい」
慌てて医局を飛び出す。
『よろしくな！』って笑顔を向けてくれた
翔先生の顔が浮かんできて…
一時の感情で酷いことをした自分に腹が立った。
謝りたい…
［先輩side］
研修医からの話は無茶苦茶で…
怒りとかいう思いよりも「屋上にはいないで
くれ…」って。
だけど、俺の願いは虚しく…
「…っ、翔くん！！おい！！」
金網の向こう側で翔くんは横たわってる…
何度呼び掛けても全く動かない。
「早くしろ！！」
研「…っ、すみません…」
研修医が持ってきた鍵を奪い取るように…
「翔くん！！」
触れた体はビックリするくらい冷たい。
すぐに抱き上げて処置室に。
呼び掛けても全く反応はしないけれど…
翔「ん、んん…」
「ごめんな、ちょっと我慢して…」
次々と進む処置に、唸り声は漏らす。
重度になると痛みにも反応を示さなくなるから
少しだけ安心するけど…
30.2℃
計測した体温はだいぶ低い。
「翔くん？…分かる？」
翔「…」
意識ははっきりせず、受け答えもできない状態。
心配だな…
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作者名：空
| 作成日時：2017年7月13日 21時
