2535.【2】 ページ35
［雅にぃside］
社「ちょっとこっち…」
「…はい」
こうして連日、呼び出される日々。
何かと理由をつけては俺に暴力を振るう。
「他の人には…」って聞いたら「やるわけねー
だろ。お前だけだよ！」って言われて。
俺が上に言いつけないのをいい事に…
悔しい気持ちもあるけど、誰も傷付けられないなら
いいやって安堵感の方が大きくて。
社員さんが研修の期間だけ我慢すれば
いいんだもん。
大丈夫、できる…
自分に暗示を掛ける日々。
だけど日に日にストレスが増すのか、暴力は
エスカレートしていく一方。
担当の犬をシャンプーしているところにも
やってきて、シャワーヘッドで背中を何度も
殴られる。
「…っ、うっ…」
足を蹴られたり、肘で脇腹をど突かれたり…
恐い…
［智にぃside］
双子が眠った後、リビングで3人でのんびり
テレビを観て過ごす。
CMで流れたのは映画の宣伝。
ブラック企業に勤めるサラリーマンを題材と
した映画。
響いたのは上司の怒鳴り声。
ゴミ箱を蹴飛ばす大きな音。
雅「…っ…」
隣の雅紀がビクッと反応して、それから「いや…」
って耳を塞いで震え出した。
翔「え…？どうした？」
「雅紀？」
雅「い…、…やー…」
体に触れたらパニック…
泣きながら体を捩って、何かを払うように
手を振り回す。
落ち着くまで刺激を与えずに、少し待っていたら
「ごめん…」って一言。
翔「ちょ…待てって」
立ち上がって部屋に行こうとするから
翔が腕を掴む。
雅「…ごめん。ちょっとビックリしただけ…」
翔「いや尋常じゃないよ…」
雅「ほんとに、ごめん…大丈夫だから…」
「…少し話そう？」
雅「んーん、大丈夫。なんでもないの」
なんでもないわけないだろう…と思いながらも
例え兄にでも言いたくないことくらいあるだろう。
そう思うと、俺も翔も強くは言えなくて。
翔「我慢し過ぎんなよ？」
「いつでも話していいからね。雅紀の
タイミングで…」
雅「ん、ありがと…」
その日は追及せずに部屋に見送った。
雅「…っ、ぎゃー」
翔「まさ、大丈夫。大丈夫…」
だけど、その日をきっかけにパニックを
起こす日が数日続いてる。
理由は話してくれないけど、きっかけは大きな音
とか、テレビの映像とか色々で…
「眠れてないんじゃないの…？」
雅「ん、ごめん…。大丈夫」
「大丈夫じゃないよ？」
雅「…っ、ん、ごめん、心配、だよ、ね…」
思わず強く言い過ぎると、泣いて自分を責めて
しまって逆効果だ。
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作者名：空
| 作成日時：2017年5月4日 13時
