2534.【傷付けられる三男】 ページ34
［雅にぃside］
※社員さんは『社』表示です。
短期って約束で園に研修にきた一人の社員。
園長先生の友人の息子さんってことで特別に。
別の園で働いてる人なんだけど、この人が
リーダーとなって、もう一園開園するらしく。
俺と同じグループにはならなかったんだけど
挨拶をした感じでは爽やかで優しそうな人だった。
俺はこう見えて人見知りだから、関わりないまま
数週間が過ぎて。
でも、そんな時見てしまったんだ…
後輩のことを叱って、餌入れのステンレスの皿で
頭を叩くところを。
それも1回や2回ではなく何度も。
後輩は『すみません…』って頭を下げているのに
それでも叩き続けて…
「…っ、もうやめて下さい」
黙って見ていることが出来なくて、社員さんの
腕を思わず掴んでしまった。
後「…雅紀、さん」
見上げてきた後輩の目は潤んでいる。
前期は同じグループで仕事をしていた後輩。
俺より2つ年下。
「何があったんですか…？」
理由を聞けば「仕事が遅すぎる」と
いうもので。
確かに…
どちらかというと要領悪い方かもしれない。
でも、一つひとつの仕事は丁寧だし、動物に
寄せる愛情は本物。
そんな人。
社「俺はここで働いてる間の評価が大事なんだ
から、後輩にも頑張ってもらわなきゃ困る」
「はい、分かります…」
社「こんな使えない後輩が居たんじゃ、俺の評価も
下がる一方だよ…」
「それは…」
社「何度口で言っても分かんないの！次からは
お前が責任とってくれんの？」
社員さんの言うことはメチャクチャだ。
だけど、怯えた顔して社員さんを見上げる後輩を
守ってやらなきゃって思ったんだ。
きっと今までも何度か同じ様な目に合って
いたんだと思うと…
『雅紀さん！子ども達喜んでくれましたね！』
『赤ちゃん生まれたんです！雅紀さんも見ます？』
同じグループで働いていた時の、後輩の溢れる
笑顔。
楽しそうな姿を思い出した。
後「俺が悪かった、から…」
「だからって叩かれる理由にはならないよ？」
舌打ちしながら去っていった社員。
「酷くなるようだったら園長先生に相談しよう？」
後輩は首を振って「そんなことしたら俺がクビに
なっちゃうかもしれない…」って。
重ねてきた小さな失敗の事を気にしているみたい。
「そんなことでクビにしたりする人じゃ
ないだろ…？」
後「大丈夫、我慢できます…」
「いや、何とかするから」
だけど何とかする間もなく、社員さんの怒りは
邪魔をした俺へと向いた…
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作者名：空
| 作成日時：2017年5月4日 13時
