2512.【4】 ページ12
［先輩side］
翔くん達や潤くんも
いつも強くいられるワケじゃない。
壁にぶつかって苦しむ時もある。
だけど5人の力を合わせれば、乗り越えられる。
そう思っているから、俺には不安はなかった。
治療の話しを再度したら、和くんは泣きながらも
「俺が頑張ったら、また戻れる？」って。
体のこともそうだけど、4人の気持ちのことを
言っているんだとすぐに分かった。
カ「一人で頑張ろうとしなくていいよ。私も
先生も力になるから」
和「…ん」
カウンセラーの言葉を聞いて、和くんは発作後
初めて笑顔を見せてくれた。
そこからの和くんは、ほんとに強かった…
春「こっち向いてましょう」
和「…っ、んっ、んくっ…」
春「危ないので顔動かすのは我慢しましょうね」
和「…ん、…かっ、た」
治療の為にカテーテルを挿入する時も、看護師の
言うことをきちんと聞いて。
翔くんは治療は出来なかったけど、俺の補助は
してくれて。
「もうすぐ終わるからね…」
和「…っ、んっ、んくっ…」
「頑張れてる、大丈夫」
溢れる涙をタオルでポンポンと拭いた翔くんは
「えらいな、和」って優しく声を掛けてあげて。
無事にカテーテル治療を終えることが出来た。
「もう、飲めない…？」
春「そうですね、昼過ぎまで我慢しましょう」
「…ん、分かった」
カテーテル治療と並行して行われるのが
厳しい水分制限。
和くんはそれにも泣き言を言わず、頑張って
耐えている。
和「…るす、け…」
春「いますよ。ここに居ます」
病室の空気はまだいつもの様には戻っていなくて
和くんが頼るのは、もっぱら看護師だけど…
翔「ありがとう…助かってる…」
翔くんはそれに遠慮せずに頼ることが出来て
いるし、俺にも「診察、一緒にいいですか？」って
助けを求めてくれる。
他の3人も前向きな言動が増えてきて、
カウンセラーが「あと一踏ん張りだね」って。
雅「ほんとによく、頑張ってますね…」
「そうだね」
静かに寝息を立てる和くんのベッドサイドに
座った雅紀くんは、水分制限で乾いた唇を優しく
撫でながら…
その手からは愛情しか感じない。
智くんと潤くんも、和くんの寝顔に何度も
「えらいね、かず」って話し掛けていたから…
翔「頑張り屋さんだな、かずは」
和「…うすぐ、退院できる？」
翔「ん、したい？」
和「…ん、お家が、いい…」
そんな4人の空気に触れて、和くんも甘えられる
ようになってきた。
前を向き始めた5人。
もう大丈夫だ。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年5月4日 13時
