5人で生きてゆく…part50 (ページ48)

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［翔にぃside］

明け方に目覚めた智にぃ。

智「…のね、俺、頑張りた、い…」

「…ん、分かってるよ」

智「…んばれると、思う、の…」

「…ん。分かってる」

ベッドに座りながら「自分は大丈夫なんだ」って
証明しようと一生懸命。

自分にも暗示をかけようとしているんだと思う。

それはカウンセリングに行っても変わらずで…

「幻聴はあの時が初めてだ」って言い張って
カウンセラーも俺もそれを信じるしかなかった。

とりあえず軽めの精神安定剤を処方されて
家に帰ってきたけれど…

智「ぎゃー」

その夜もやっぱり幻聴に悩まされて、さらには
幻覚も見るようになって…

「言うな」「そんなはずない」って後退りながら
何かを払おうとして、手が宙を舞う。

「…大丈夫だからね…」

智「…ん、ん…」

落ち着いてからは「ごめん、もう大丈夫」しか
言わなくなって、雅紀や双子を安心させようと
振る舞う。

俺には「病院」とか「入院」とか言われるんじゃ
ないかと思っているんだろう。

目を合わせようとしても逸らされてしまう。

だけど智にぃは、どうやったら俺らを安心させて
俺を説得出来るのかの正しい判断すら出来ない
程に追い込まれていて…

「薬は自分でも持ってるから大丈夫」って、
鞄の中から市販薬を取り出して見せてくる。

睡眠薬に精神安定剤…

そんなのを証拠にしたら余計に心配を掛ける
だけ…

智にぃ以外のみんなは分かってるのに。

だけど判断力を失った智にぃだけは「ほらね？
自分で調節も出来るから」って誇らしげな顔で
みんなのことを見つめる。

この時ばかりは、俺ともしっかり目を合わせて。

ここまで症状が進んでしまっては、俺ら素人の
フォローでどうにかなるものじゃない。

普段とはあまりに違う智にぃの様子に
雅紀と双子もさすがにかなり心配そうな顔。

「カウンセラーにこの薬見てもらおう？
処方してもらった薬との飲み合わせの問題も
あるかもしれないし」

智「…ん。でも俺、大丈夫だから、ね…？」

「ん、分かってるよ…」

適当な理由をつけて智にぃを病院に連れて行く。

診察を終えた後は、付き添いの雅紀に
カウンセリングルームから連れ出してもらう。

カウンセラーと2人きりで、色んなことを
話し合った。

智にぃは嫌がると思うけど、今回は入院させて
欲しいってこともお願いした。

家でみていくには症状が重過ぎる。

カウンセラーも「入院がいいと思う」って
了解してくれたから。

このまま入院させてしまう。