2140.【智にぃの大事故】 ページ40
［翔にぃside］
外来の診察中に内線で
呼び出された先は手術室。
手術室の前では先輩が待っていて「落ち着いて
聞けよ？」って前置きされて…
「…智にぃが…ですか…？」
説明された事実が受け入れられなくて
頭が真っ白になる。
智にぃが事故に遭って、緊急手術中なんだって…
病院に運ばれてきた時、すでに意識がなくて
危険な状態だった…って。
先「もうすぐ手術終わるから…お前はここで
待っててやれ。俺が連絡してくるから」
「はい…」
自分でもビックリするくらい弱々しい声しか
出なくて…
先輩はそんな俺の肩を軽く叩きながら「大変なのは
これからだからな？」って一喝して去っていく。
それからのことは、あまり覚えていない…
個室のICUに入れられた智にぃ。
人口呼吸器から規則正しい音が響いて
それを4人で黙って聞いていた。
失うことが怖い…
智にぃがいなくなったら、俺は一体どうやって
生きていったらいいんだろう…
『しっかり者』とか『リーダー気質がある』とか
言われる俺だけど、それは智にぃの存在が
あるからであって…
俺一人の力で…なんて思ったことない。
智にぃがいて、兄弟の存在があって…5人だから、
できたことなのに。
零れそうになる涙を堪えることで精一杯。
雅紀や和や潤の心のケアまでは、到底気が
回らない状態。
いつも元気な雅紀ですら、参ってしまって
笑顔を出せないでいるというのに…
気持ちに寄り添ってあげることも出来ない。
それだけに智にぃの存在は大きくて大切。
俺にとってだけではなくて、もちろん雅紀や双子に
とっても…
和「やーだ…やりたくな、い。いい…」
事故の翌日、和の情緒は不安定で診察も拒む。
さすがにICUでの診察は遠慮して、先輩が
空けてくれた診察室にきたんだけど…
和「…っ、いい…、や…」
さっきから聴診器を手で払って聴診すら
させてはくれなくて。
俺の表情が険しくなってきたんだろうね…
先輩が「ゆっくり…」って口パクでアドバイスを
くれるほどに。笑
正直、さっさと診察を終えて智にぃの元に
帰りたかったのが正直なところ。
先「かずくん？先生やってあげるから、翔くんに
支えててもらおっか」
和「…っ、んっ、んくっ…、や…」
和の聞き分けがないのは不安から…
我儘ではないと分かっているつもりでは
いるんだけど、何しろ余裕がない状況。
何度目かに聴診器を払われた時…
「じゃあ、勝手にしな。ずっとここに居ろ。
俺は戻る」
そう怒鳴ってた…
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作者名：空
| 作成日時：2016年2月10日 18時
