2016.【忍び寄る病魔】 ページ16
［和side］
翔「念の為に…
検査追加してもらったから」
「…」
検査入院が長引いた。
もうね…感じちゃうんだよね。
こういう時の結末は分かってる…
予定にはなかった検査を追加されて詳しく
調べられる。
それで言われるんだ…
「入院して治療していこう」って。
「やだ！」
翔「かず…」
予想通りの言葉だけど、そんなに簡単には
受け入れられない。
大嫌いな入院も数日だから我慢したんだ…
「帰る！今すぐ帰るっ…」
ベッドのテーブルに広げられた資料を払い落として
にぃ達の手を払い除けると、零れ始めてしまう涙。
ほんとは泣きたくなんてないのに…
翔「かず？これ見て？」
「…っ、みたく、ないっ…」
翔「まだ、こんなに小さい。先生も薬で
治療してみましょう。って言ってくれてるよ？」
「…っ、…んっ…やだっ、かえ、る…」
見せられた写真も手で払ってベッドから
降りようともがく。
智「かず…？まずは話だけでもしてみよう？
嫌々って言ってても進めないから…ね…？」
「ん〜…、はな、せ。…っん、あらし、と
やくそく、してるん、だもん…」
帰らなきゃいけないんだ…
俺はあらしに「10日には帰るからね」って
話したんだ。
もう約束の日にちは過ぎてしまってる…
あらしとの約束は絶対だもん…
［翔にぃside］
新たに見つかってしまった和の病気。
俺らでさえ受け入れられない事実を、和がすぐに
受け入れられるはずはない。
分かってはいるんだけど…
「とにかく１日でも早く、抗がん剤治療を
開始した方がいい」って先生の言葉が
俺の中では絶対で。
可哀想だけど、興奮状態の和を落ち着かせるために
薬を使わせてもらう。
和「…っ、やん、な！…っん…」
点滴の側管から薬を入れようとすれば、和はさらに
激しく泣いて抵抗する。
智「いいよ、翔。抑えてるから…」
「ごめんね…ありがと…」
智にぃが抱え込んでくれて薬を追加。
「あらしと約束したのに」って泣き叫ぶ和を
薬で抑え込む…
和「…っ、んっ…、…っ…」
薬って恐い。
あんなに猛抵抗して興奮していた和でさえ
力が抜けてクタッとしちゃうんだもん…
「ごめん…とりあえず、ここで止めておく…」
眠らせてしまうのは、さすがに可哀想で
出来なかった。
智にぃの温もりを感じていて欲しいから…
和「…っ、んっ…っ…」
「…ん、嫌だよな。ごめんな…」
智にぃの腕の中で、静かに首を振りながら
現実を拒否する和を、見ていることしか出来ない…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
