1959.【3】 ページ9
［智にぃside］
打ち合わせが予定より
少しだけ早く終わって家に帰れた。
だけど、玄関のドアに手を触れた瞬間…
何だか嫌な予感がしたんだ。
予感は的中。
だって玄関の鍵は開けっぱなし。
玄関マットは、半分ズリ落ちていて和の靴が
転がっている。
和が『学校行きたい』って喚いて、玄関でバトルを
繰り広げた後は、こんな状態の時もあるけれど…
それとは空気が何か違う。
「…っ、かずっ！かず？」
靴を脱ぎ捨てて、家の中を探してみたけれど
見つけられない…
ふと…庭に目をやって、見つけた…
「かず！！」
庭の片隅で小さく小さくなった和は
ガタガタ震えながら「たすけて…」って
繰り返していて。
「…かず？」
連日の雨で、芝生は泥んこ。
座り込んだズボンは湿っていて、腕や手にも
泥が付いている。
和「…っ、…んくっ…、…っん…」
隅っこで泣きじゃくっていた和だけど
俺の存在に気が付いた途端、ものすごい強さで
縋ってくる…
「ん、よしよし…」
状況が全く分からないけど、和がこんなに
辛い思いをしているのなら、よっぽどの何かが
あったんだろう。
「だいじょうぶ…いるからね」
ギュッと抱き締めて温もりを伝え続ける。
和「…っ、とにぃ、さ、と…ぃ」
「ん。ここにいるからね…」
胸元にグリグリと押し付けてくる頭を
しっかりと腕の中におさめ続けて…
どれくらいの時間が経ったのかな。
和が「ずっといて」って言いながら
顔を上げてくれた。
「ずっといるからね…だいじょうぶ」
和「…っ、さにぃ、…なくな、った」
「ん、雅紀ね。出掛けたの？」
和「…っ、起きた、ら…なかった」
「そっか、そっか。きっと出掛けたんだね」
まさか、こんなことになるとは思わずに
出掛けたんだろう。
別に和は、留守番が出来ないわけではないから。
ただ、突然にこういうことが起こることが
あるってこと。
和「…っ、…んくっ…」
まだまだ嗚咽は止まらないけど、少しずつ
落ち着いてきたから、そろそろ家に入らないとね。
汗もかいてるし、泥だらけだから軽くシャワー
浴びれたらいいけど…
「かず…？お家、入ろっか」
和「…んっ、んっ…、はいっても、いっしょ？」
「ん、一緒にいるよ。ここ、握ってて？」
和「…っ、んっ…」
服の裾を握らせたら安心したみたい。
まだ足に力が入らないから、軽く支えつつ
家の中へと戻る。
家に入ったら思ったより落ち着いてくれて
シャワーも浴びることが出来た。
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
