1993.【3】 ページ43
［翔にぃside］
和は俺の腕の中で尚
「食べたい」って食材に手を伸ばすから…
「ごめん、潤。
手の届かない所に片付けてもらっていい？」
潤に遠ざけてもらって、和を落ち着かせる。
「いっぱい食べなきゃ」「強くなるの」って
繰り返す姿を見ながら、ここ数日の和を
思い出していた…
食べる量が増えて、俺らは喜んでしまったけど…
それがいけなかったのかもしれないね。
いくら沢山食べたくても、限度を超えれば
体がついてこない。
それは和が病気だからってことではなくて、
誰でも同じ。
俺にだって満腹の限界はあるし、無理をし過ぎれば
摂食障害になる事がある。
「ごめんな、かず。気が付いてやれなくて…
辛かったね…」
和「…っ、んーん、んーん…よく、なりた、い」
「大丈夫。俺の言うこと聞いてちゃんと治療
してるじゃん。和は強いから大丈夫…」
声を掛けながら背中をさすっていたら
眠ったみたい。
腕にかかる体重がズシッと重くなった…
しばらく様子見でいいのか。
それともすぐにカウンセリングを受けさせて
ケアした方がいいのか。
俺らだけでは判断が難しくて、翌日になってから
先輩にもカウンセラーにも相談した。
2人の答えは決まって「まずは和くんと
話をしてみたらどう？」だった。
そうだよね…和の抱えているものは大きい。
間違ったことをしてしまえば、大きくガタガタと
崩れてしまうこともあり得るから。
「…どう？和は、どうしたい？」
4人でしっかり話し合って、和と話をしてみる方向で
進んでるんだけど…
和「…うも、…たくない。…よく、なりたい、
だけだ、もん」
和はポロポロ泣いて、しゃっくり上げながら
「どうもしたくない」って。
もちろんカウンセリングには行きたがらないし
「話したくない」って。
智「ちょっと様子見でいく？」
雅「そうだね…こんだけ泣いてたら、なんかもう
可哀想だし…」
「ん、そうしよう」
潤もコクッと頷いてくれて方向性は決まった。
ただ、やっぱり…
そんなに簡単な問題では、なかったよね…
和が、自分の身に起きていることに気が付いて
なかったんだもん。
無理矢理に食べて、吐いて…
それを繰り返している自覚なし。
夕飯中は「もう、やめておこう」って止めれば
取り乱さずに頷くことが出来るけど…
『食べなきゃ』って思いが抜けないから
夜中に食べ物を探してしまう。
無意識だから、自分の行動を把握していない和は
「そんなことしてない」って言い張る…
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
