1991.【沢山食べて強くなりたい】 ページ41
［和side］
智「1時間くらいで
戻ってくるから」
「ん ♪」
智「一人になるんだから大人しくしてろよ？」
「ん！」
ヒラヒラっと手を振って智にぃを病室から
送り出す。
病院の近くで打ち合わせがあるんだって。
翔先生は外来中。
あ、俺は検査入院中。
2泊3日だから明日には退院できるんだけどね。
もう検査ないし。
だから売店くらいなら行ってもいいよね。
買ってもらった雑誌、読み終わっちゃったから
新しいのが欲しい。
変にコソコソ歩くと「和くん、どこ行くの？」
「翔先生に許可もらった？」ってね、色んな人に
言われちゃうから。
そしたら即、翔にぃのとこに情報いっちゃうし。
ここは堂々と歩くに限る。笑
自分から「こんにちは〜」って挨拶しながらね。
俺って人懐っこいから、この方が自然。笑
自分で言うのもなんだけど。
目的の雑誌を購入して、寄り道しながら
病室に戻ろうと思ってた。
プラプラしてたらお昼ご飯の配膳をしている
おばちゃん達がいて…
その会話が痛いほど耳に入ってきた。
『全然食べないから、痩せている』
『栄養が足りていないから、病気も治らない』
別に、俺のことを言っているわけではないのに…
心にズーン…と伸し掛かる。
勝手に病室抜け出してきたから天罰が
下ったのかな…
［智にぃside］
検査入院で数値の悪化も見られず一安心。
和は元気すぎるほどで、ご飯をモリモリ食べて
翔にいっぱい褒めてもらってる。
沢山食べるとみんなが喜ぶから、それが
嬉しいみたい。
夕飯のご飯はおかわりするし、お弁当も
「いっぱい入れて！」って言うようになった。
無理していることには気が付かなかった。
いつも笑顔で「美味しい！」「もっと！」って
欲しがったから…
和は小さい頃から食に興味がなくて…病気に
なってから、もっと食が細くなって。
だから俺らは嬉しかったのかもしれない。
心配事が一つ減って、知らずのうちに喜んで
いたのかもしれない。
和にとっては、それがプレッシャーに
なってしまったんだよね。
今日も「おかわりっ！」って。
翔「えらいな〜、かず。強くなれるね」
和「んふふ…やった！」
食後、ソファーに座ってる翔に甘えながら
「ねぇ、ほんとに強くなれる？」って。
そんな姿を見て、俺ら4人は単純に『あいつ、
可愛いなぁ〜』って思ってた。
だって、その姿はまるで『ヒーローになれる？』
って言っている子どもみたいだったから…
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
