1988.【3】 ページ38
［智にぃside］
翔の『大丈夫』ほど
信用のないものはない。笑
当直明けなのに、なかなか帰ってこないし
帰ってきたと思ったらパソコンをカチカチ…
そんなことが何度かあって、もうね…翔への
信頼はゼロに等しい。笑
『倒れる前に何とかしないと』って思いから
朝になって部屋にお邪魔。
翔「あ…ちょっと、待って…」
ノックしても返事ないから寝てるのかと思いきや…
ドアに背を向けて、パソコンをカチカチっとする
翔がいた。
「翔？昨日帰ってきたの何時…？」
翔「…」
「…もしかして、寝てないんじゃないの？」
翔「…」
部屋にはカチカチとパソコンのキーボードを
打つ音だけが響く。
俺の声は、翔によって無視される。
都合が悪いから聞いてない振りをしているのか、
集中しているから聞こえていないのか…
この際、どっちでもいいや。笑
ベッドに腰掛けて、翔から声が掛かるのを
待つことにしよう。
「座る場所ねーや…笑」
資料と本が散乱してんだもん。
ベッドの一部だけ片付けて座らせてもらう。
翔はもともと片付けが苦手。
放っておいたら、どこまでだって散らかって
いくんだから。笑
俺と『掃除機がかけられる状態に』って
約束したんだ。
それからは割と守ってくれてる。
こうやって溜め込んでいる時、以外はね。
資料を片付けながらパラパラとめくってみる。
書いてあるのは難しいことばっかり。
でも、翔がこうして頑張ってくれているお陰で
和は元気でいられるんだもんね。
それに沢山の患者さんも。
そう思ったら無理をしてしまう翔を、強く責める
ことなんて出来ないから…
翔「…トイレ行ってくる」
待たせといてそれかよ…笑
そう思いつつ、逃がしてやる。
さすがに何十分も逃げていられるわけじゃ
ないからね。
トボトボと戻ってきた翔の腕を引っ張って
ベッドに座らせる。
「で？…昨日寝てないの？」
翔「…っ、寝たよ？」
「嘘だね。笑」
嘘つくの下手くそなんだから、やめておけば
いいのに。
俺に「ほんとは？」って迫られた翔は目を伏せて、
「…これから寝る」ってボソボソ。
「約束できる？」
翔「…ん、する」
「無理し過ぎるのやめてよ？倒れたりしたら
みんな心配するんだからね？」
翔「…ん」
あえて『みんな心配』ってワードを出す。
少しは心に響いてくれるんじゃないかなって
思うから。
この日は眠るところまで監視するのは
やめておいた。
過労とストレスから、少しでも救われることを
祈ったけど…
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
