1986.【翔先生の過労】 ページ36
［智にぃside］
翔「…どこ？
なぁ、かず？どこが痛い？」
そう言って、ベッドに伸ばされる翔の手。
腕の点滴の痕…
俺が気が付いてないとでも思ってる？
翔が忙しいのは分かってる。
家でも、和のこととなると、どうしても
翔のことを頼りにしてしまうし。
そのせいで翔の負担が増えているのは
分かってるんだ…
翔「…ここ？」
和「…ん。そこ、痛い…」
翔「おっけ。湿布貼って様子みような」
痛がってるのは腰みたい。
翔「湿布とってくるから、智にぃにさすってて
もらいな？」
「お願い」って俺に向けられる翔の優しい笑顔。
それが嘘で作った笑顔じゃないことは保証できる。
でも、それによって自分も気が付かないところで
限界がきてるんじゃないの…？
たまには『疲れた〜』って叫んでみるとかさ
『やーめた！』って投げ出してみるとか
『もう、やってらーねー！』って怒りを俺らに
ぶつけてくれてもいいんだけどな…
だって両親が亡くなる前の翔は、そんな性格だった
んだよ？笑
まぁ、反抗期だったのもあるだろうけど…
『うるせー』『好きにさせろ』って。笑
それが本来の翔なんじゃないかなって思うことが
多々ある。
今の翔は何でも頑張って、こなし過ぎ。
俺からしたら、良い子過ぎってこと。
何でもかんでも全力で頑張りすぎて、自分に
厳しすぎなんだから…
［翔にぃside］
当直明け…
『はぁ〜…休める〜』って思ったところに
救急搬送。
誰かに「手伝って」って言われるわけじゃない。
ただ、体が勝手に反応して「やります！」って
言っている自分がいる。
だって、これが俺の仕事。
自分で選んだ仕事なんだから…
いくら俺が「やります！」って意気込んでも
人が足りている時は「当直明けは帰れ」って
帰される。
それはそれでバランスが取れていいんだけど…
今回は人不足。
「そっち頼む！」って言葉に頷いて、夢中で
働いた。
そんなことしていると体が仕事モードだから
『もっとできる』って勘違いして…
『休める〜…』って喜んでたことなんて
すっかり忘れて、研究室に寄ったりして
働き過ぎてしまう。
だって時間は、いくらあったって足りないんだ…
睡眠不足は点滴で補えばいい。
智にぃに「仮眠してから帰ります」って連絡して
仮眠室へ。
持ち出した点滴を自分で刺して、お腹の上に
広げたパソコン。
寝ようと思ったんだけど気になって…って
自分に言い訳。
広げた研究結果はどれもボツ。
はぁ…
ストレスも溜まる…
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
