1984.【5】 ページ34
［和side］
カ「脱ぐ？これ着る？」
「…ん、着る…」
シミュレーションと同じ。
自分に何度もそう言い聞かせて、ここまで進めた。
智「ほらここ、腕抜いてごらん…？」
「…ん…」
雅にぃに後ろから抱えてもらって、智にぃに
脱がせてもらう。
その少し後ろには検査着を持ったカウンセラー。
良かった…
やっぱり、この空間にあの先生はいない。
ちょっぴり冷たく感じる検査着に腕を通して
紐を結んでもらって準備ができた。
カ「隣の部屋に移動しようね」
「…っ、んっ…」
智「大丈夫…ゆっくり…」
足に力が入らなくてガタガタと震えるばっかり…
智にぃと雅にぃが立たせてくれて何とか
隣の検査室に入ることができた。
だけど…
「…っ、…わい」
検査室の独特の雰囲気にのまれてしまう…
雅「大丈夫。翔にぃだけだよ？」
智「ほら、大丈夫。俺らもいるから…」
翔にぃが「恐くないからな…」って手を握って
くれる。
いつもは出さない、とってもとっても優しい声で…
「…ょにぃ」
安心する。
検査台に座らせてもらってから寝転ぶ…
いよいよ始まる検査。
俺を見下ろすのは誰…？
「…っ、ん…」
思わず恐くなって目を閉じる。
カ「かずくん目、開けてごらん…？」
「…ん」
カウンセラーに肩を叩かれて目を開ける。
「…ょ、せんせ…」
カ「そうだね、それから？」
「さとにぃ、と…さにぃ…」
カ「ん。みんないたね」
ここまでもシミュレーション通り。
シミュレーションより、上手く進んでるかも…
どこまで頑張れるかな…
翔「ごめんな。これだけは我慢してな…？」
翔にぃの声がして拘束具で体を固定される。
その上から、智にぃと雅にぃが
一生懸命に温もりを送ってくれるけど…
「…わい、こわ、いよ…」
ポロポロ零れ始めた涙は止まらない。
カ「大丈夫、だいじょうぶ…」
シミュレーションと同じように、カウンセラーが
声を掛けてくれて、みんなが傍にいてくれる。
俺って幸せだな…
カ「翔くんのこと見ててね。
和くんの検査、してくれるからね…」
「…ん。しょにぃ、こわく、ない…」
カ「そうだね」
俺の検査をしてくれるのは、翔にぃだもん…
翔にぃはみんなに『翔先生』って呼ばれてる
腕の良いお医者さん。
あの先生とは違う…
良い方向に考えようとするのに、頭に浮かんできた
あの先生の顔が消えない。
「…っ、んっ…、…っ…」
智「かーず。ゆっくりね…」
そんな時に耳元で聴こえたのは
智にぃの優しい声。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1603人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
