1983.【4】 ページ33
［智にぃside］
運転中に聞こえるのは
「病院行っても先生いない？」「検査、先生は
しない？」って途切れ途切れに和が質問する声。
ただただ泣き叫んでいるだけの時を考えたら、
こうして質問出来ている方がいいのかも
しれないけど…
和の中での先生の大きさを改めて思い知る。
でもね、大丈夫。
バックミラーを覗けば、和を真ん中に挟んで
優しく背中をさすってる翔と雅紀がいるから…
2人とも、頼もしくて優しい兄ちゃんの顔してる。
カ「こんにちは、かずくん」
和「…」
駐車場まで迎えに来てくれたカウンセラーを見て
顔を引きつらせた和だけど、まだ泣いていない。
ここまでの経過を見る限りでは、今までより
精神的に遥かにラクだったことが分かる。
「いこっか…？」
和「…んせ、ない…？」
「ん、いないよ。」
翔がカウンセラーと話をしている間に、そっと
車から降ろす。
和「…っ、んっ…」
「おいで…」
和「…っ」
堪えていた涙がポロッと零れ落ちた和を
腕の中に抱き締めて、それから歩く。
雅紀もしっかり支えてくれて…
カ「かずくん…？部屋の中、誰がいる？」
診察室で始まったカウンセリング。
このまま検査に進む流れ。
何度も繰り返したシミュレーションだ。
和はベッドに座った俺の膝に突っ伏していたけれど
カウンセラーの問い掛けに顔を少しだけ上げた。
和「…と、にぃ」
「ん、いるからね」
和「…さにぃ」
雅「ん、いるよ」
和「…ょ、にぃ」
翔「ん、ここな」
みんなで頭を撫でながら存在と温もりを
確認させる。
カ「先生は？和くんに検査した先生はいる？」
和「…っ！ないっ…」
パッと恐怖に目を見開いた和。
シミュレーション当初は「和くんに検査した先生」
ってワードが出るだけで、パニックを起こす程
恐怖心が大きかった。
もちろん今でも精神状態によっては取り乱すけど…
カ「いないもんね。しっかり確認してみて？」
和「…っ、ん、…っん…」
「落ち着いてね…ゆっくり…」
速くなる呼吸を整えてあげながら背中をさする。
部屋をキョロキョロしていた和は、自分の目で
確認できて、少しだけ落ち着けた。
俺の膝にクタッと体重を預けてる。
カウンセラーは小声で「次に進もう」って
俺らに合図。
翔「かず…？今日も俺が検査してあげるからね。
準備してくるな？」
和「…ん、…ょにぃ、だけ」
翔「ん、俺だけ」
頷いた和の頭を撫でて診察室を出ていった翔。
俺らは和にも検査の準備をさせ始める。
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
