1954.【4】 ページ4
［翔にぃside］
雅紀から連絡があったから
午後の外来が終わってすぐに、家に帰ってきた。
「ただいま、かず」
和「…おかえり」
両手で雅紀の服の裾を掴んだまま不安そうな
表情を浮かべている和。
まだ離れられないらしい…
雅「あっちに座って、腕見てもらおっか」
和「…っ！…んーん…」
自分で噛んでしまった腕。
まだ雅紀も見れてないって言ってた。
雅「ごめんね…？これ着るってきかなくて」
苦笑いした雅紀が指差したのはロンT。
頑固だもんな〜、ほんとに。笑
「とりあえず、こっちおいで？」
和「…んん、…さにぃ…」
「雅紀と一緒でいいから。…おいで？」
ソファーに座ってポンポンと呼べば、雅紀に
引っ付いたまま仕方なく足を進めてる。
「…痛かっただろ？…診せて？」
和「…んん、…たくな、かった…」
「そっか、痛くなかったか…」
腕を噛む痛みなんかより、もっともっと痛いこと
心に抱えてるんだもんな…
和「…の、ね？」
「…ん？」
和「…んせ、い、…てきた」
「夢の中に出てきたの？」
和「…っん、んっ…」
「そっか、そっか…恐かったな…」
自分から話せたことにホッとする。
恐かった記憶を自分一人の心の中に
溜め込んでほしくないからね…
和「…っん、…で、…ゅっ、と…た」
腕をぎゅっとされたらしい…
和「…んっ…、から、だも…ゅっと…た」
体もね…
「ん、恐かったね…」
和「…っ、んっ…、…んせ、い…いかけ、てく…」
あまりの恐怖で、先生が追いかけてきたような
そんな錯覚まで…
和「…こ、つかん、で、る」
和は噛んだ方の腕を指差して「ここ、掴んでる」
ってポロポロ涙を零す。
「掴んでないよ、大丈夫。それに、先生はもう
和の近くにはこれないから。な？」
和「…っん、…んくっ…」
「診せて…？治してやるから…」
そっと腕を掴んだけど、嫌がる素振りは
見せなかったからロンTを捲ってみる。
うわっ…想像以上…
かなりの強さで長時間噛み続けたことが分かる。
歯型がくっきり付いて、痣になって変色してる…
和「…っ！…っん、…んにも、ないっ…」
「待って…大丈夫だから…」
和「んん…、ん…、や…」
和もビックリして不安になったんだろう…
診せることを嫌がって腕を引きたがる。
「大丈夫。…な？」
頭を撫でながら声を掛けてから、雅紀に体を
抱えててもらえるようにお願いする。
「なんにもない」って訴えて捩ろうとする体を
雅紀が優しく抱き締めてくれた。
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
