1979.【7】 ページ29
［翔にぃside］
俺の「出して」って言葉に
しっかりと頷いた潤は、和の腕を引いて
部屋を出ていってくれた。
部屋を出るまでは怒って怒鳴ってた和も
一歩外に出たら冷静になれたみたいで
部屋の外が静かになった。
「智にぃ、ごめんね…大丈夫だからね」
智「…っ、…んっ、…っ…」
不安になって震えている体を、そっと抱き寄せて
雅紀と宥めていたら「点滴、やる」って。
「少し落ち着いてからでもいいよ？」
智「…んっん、やる」
「和が可哀想だから」って。
「ありがとう…無理させてごめんね…」
智「ん、ん…へい、き…」
平気と言いながらも、俺に向かって差し出される
手は、小刻みに震えていて…
「大丈夫。すぐ済むからね…」
そっと包み込んで目を合わせて声を掛けてから
雅紀に抑制の指示を出す。
恐怖で平常心を失うことになれば、何があるか
分からないから念のためね。
雅「よし、握ってよっか」
智「…ん、すぐ…」
「ん、すぐね」
普段から可愛い顔してる智にぃだけど
目を潤ませて見つめてくる智にぃは一段と
可愛くなってる。笑
こんなこと言ってる場合じゃないのは
分かってるんだけどさ。
「ちょっと我慢しててね…」
消毒して針を刺したら「やっぱり、いい…」って
強く引かれる腕。
雅紀が「大丈夫だから…」って抑えててくれて
何とか刺し終えた。
「大丈夫。必要な薬だけ…ちょっとに
しておくから」
智「…っ、ん、んん…」
「触らないよ？抜いたら、駄目…」
智「…っ、ん、…らない、よ、いらない…」
抜こうとするから腕を抑え込んだら
涙が止まらなくなっちゃった…
「…智くん？駄目…」
智「んん…」
ちょっと厳しく、目を捉えて言い聞かせたら
パッと逸らされちゃった。笑
その直後に部屋に飛び込んできた和。
また取り乱したら…って思ったけど、俺に向かって
「さっきはごめんなさい」「必要なことって
ちゃんと分かったから」って。
「ありがと…ごめんな？」
ワシャワシャっと頭を撫でたら「テヘッ…」って
照れ笑いして、それから智にぃに抱き着いた。
和「これ、大事なんだって。俺も点滴は
好きじゃないけど、いつも元気にして
もらってるから分かるんだ」
智「…ん、ん」
和「抜いたら翔先生怒るからやめておこう？笑」
智「ん…ふふ…」
和のお陰で、智にぃの体から力が抜けた。
そのまま「大丈夫だからね」って胸元を
さすってくれていたら…
『あ…寝れたね…』
和のお陰で心の傷も治りそうだな。
END
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
