1962.【6】 ページ12
［智にぃside］
分離不安の症状が
出ている和は少し幼い。
だけど、雅紀が一緒にいてくれるお陰で
不安定にはなっていないから、何度も楽しそうに
笑い声を上げている。
夕方、学校から帰ってきた潤を引き連れて
大張り切りで、あらしの散歩に出掛けていった程。
翔が帰ってくるまで、あと少し。
そんな時に玄関に響いた和の声。
「やめて、触らないで〜…」って。笑
雅「和が、考えないで触ったからでしょ？」
潤「くははっ！」
和「むぅ…」
散歩の途中で指に棘がささったらしい。
「ちょっと飛び出してるから、毛抜きで
引っ張ってあげる」って雅紀が言って
くれてるのに、和は「いやだ」って怒ってる。
雅「じゃあ、翔にぃ帰ってきたらやってもらいな」
和「んぅ…」
突き放された感じが切なかったのか、途端に
目を潤ませて、雅紀の服の裾をギュッと掴む。
雅「なーに。笑」
和「…」
雅「別に怒ってないよ。ほら、ジュース飲も？」
和「ん…」
今の和は、何よりも雅紀。
もちろん、翔とか潤とか俺にも「いてね」とは
言うんだけど、ここまでじゃない。
そんなんだから、翔が帰ってきてもやっぱり
「まさにぃがいい」って引っ付くのは
変わらなくて。
翔「雅紀の隣座ってていいから、診せて？」
和「だめ…まさにぃ」
翔「だったら雅紀に診せて？抜いてもらいな？」
和「んぅ、…も、翔にぃが、いい」
和の中にある葛藤。
分からなくもない。
本当は雅紀に抜いてもらいたいけど、ちょっと
心配。笑
だから翔にぃがいいけど…
でも…雅紀がいい。ってね。笑
雅紀は「信用ねーな。棘くらい抜けるって」って
笑ってるけど、和は「ほんと…？」って不安気で。
翔「はは！じゃあ、俺も見ててやるから」
雅「あひゃ！それなら心強いね！」
和「…」
雅「ん？それでも嫌？」
和「…んばったら、…したも、…てくれる？」
和の言いたいことが分かって、思わず俺も翔も
「かーず？」って言いそうになった。
でも、それより早く雅紀が『当たり前じゃん、
明日も休みもらってるよ』って。
「いいの？」って俺らの視線に、飛び切りの笑顔で
頷いた雅紀。
雅「だから、抜いちゃおう？」
和「…ん」
手を優しく包み込んで、これでもかってくらい
慎重に慎重に棘を抜いてくれる雅紀を見て
和は何を感じただろうね…
今回は、雅紀の献身的な愛情たっぷりの
ケアのお陰で、心が復活する日も
近いんじゃないかなって。
頼もしくて優しいにぃちゃんいたら安心だね。
END
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作者名：空
| 作成日時：2015年9月4日 6時
