1644.【4】 ページ44
［先輩side］
翔「和のデータ…
見てもらっても、いいですか？」
「もちろん…」
白衣をピシッと着て爽やかな笑顔で俺の前に
座った翔くん。
すごいな…と改めて思う。
出勤してきた時は顔色も悪くて、足元はフラついて…
だけどカチカチっとパソコンの操作をして、自分で
処方箋を印刷して…
仮眠室で点滴でもしてきたんだろう。
1時間ちょっとで戻ってきた彼は別人の様だ。
机に並べられた和くんのデータを見て
さらに驚く。
入院中に改善出来なかった数値が見事にクリア
されていて…
俺がビックリした表情をしていたんだろう。
翔くんが「俺は、何もしてないんです」って。
でも、それはさ…？
「医師として…だろ？」
翔「…はい」
兄として精一杯に、尽くしたんだろ？
家での看病は危険も伴うし、負担も大きい。
でも、和くんの様な患者さんの場合には
プラスになることの方が大き過ぎて…
「連れて帰って正解だったな。」
こう言わざる負えないじゃないか。
翔くんはしっかり頷いて「先輩のお陰です。
ありがとうございました」って頭を下げた。
どこまでも真面目で熱心な医師。
きっと彼の様な医師が、この先…数え切れない程の
患者さんを救うんだろうなって思う。
［翔にぃside］
『和も連れて帰るし、レポートも仕上げる』
最後まで言い張った俺に、先輩が考え抜いて
出した条件は「午前中の外来は
みんなで交替する」だった。
迷惑を掛けるのは嫌だったけど、和の自宅療養と
レポートの提出は譲れないから、渋々頷いた。
今となっては、それで正解だったと思ってる。
そのお陰で、午前中は点滴を受けることが出来たし
レポートを進めることも出来たから。
明け方…
パソコンの『送信完了』の文字。
よかった、間に合った…
嬉しくて嬉しくて、自分が発熱していることも
頭がガンガン痛むことも忘れて、御礼を兼ねて
先輩に報告のメールを送った。
そのまま和の部屋へ。
雅紀がベッドに肘を付いてウトウトしていて…
そうだよな、みんな寝不足なんだよな…って。
それでも「レポート送った。ありがとな…」って
俺の報告に目を潤ませながら喜んでくれて。
「和のこと看てるから寝てきていいよ？」って
優しい言葉をくれるんだ。
「ん、ありがとな。でも、ちょっと替わって
もらってもいい？」
「傍に居たいんだ…」って俺の珍しく素直な言葉に
雅紀は頷いて静かに部屋を出ていった。
ベッドへと手を伸ばせば触れる温もり…
涙が零れる…
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作者名：空
| 作成日時：2014年10月3日 6時
