1601.【咽頭炎】 ページ1
［雅にぃside］
和「…ん、ん…」
翔「かーず？診せてごらん？」
和「ん〜…ん…」
翔「診るだけ。なにもしないから。な？」
病院のベッドに寝転んでフルフル首を振る和。
感染症にかかって、そこから酷い咽頭炎になって…
もう、いつもみたいに元気に抵抗できなくて
弱々しく声を出して、少し首を振るだけ。
薬を飲み込むのも相当辛いし、喉に薬を塗るのは
もっと辛くて…
『口を開ける』＝『良いことがない』
そう思ってしまったらしくて診せてもくれない。
でも翔にぃは、患者さんが素直に口を
開けてくれない経験なんて山ほど積んでるから。
翔「軽く手抑えててくれる？」
「ん、分かった」
翔「かず、ちょっとだけな？ごめん、診せてね〜」
和「…っ、…っん…」
器用に指を入れて口を開かせてしまう。
和「…ん、…っ…」
あんまり負担を掛けたくないから、ほんとに軽く
腕を抑えてるだけなんだけど…
和「ん、ん…」
それでも抵抗する力はなくて負けてしまう和。
翔「ん、おしまい。ごめんな？嫌だったね…」
滲んでいた涙をささっと拭って頭を撫でてあげる
翔にぃ。
和「…とにぃ、は…？」
翔「家に戻ってる。もうすぐ戻ってくるよ？」
「寝れそうなら寝てな？」
コクコク頷いた和は目を閉じた。
智にぃには和の宥め役でいてもらうつもり。
実は昨日、和が薬塗る時に猛抵抗したもんだから
俺らは3人で抑制したんだ。
そしたらもう、終わった後が大変だった。
「3人とも意地悪！」
「3人ともバカ！」
「3人とも、どっかいけ！！」
とにかく和は3対1でやられたことが悔しくて
仕方なったみたいで。
そりゃ、気持ちは分かるけど…
そこから、俺ら3人には甘えてくれなくて
辛いくせに「いい！」って怒って。
だから反省したってわけ。
智にぃには抑制に加わってもらわずに、
終わった後のフォローに付いてもらおうって。
今日は上手く甘えられそうで何より。笑
和がウトウトし出した頃、そっと病室のドアが開いて
智にぃが顔を出す。
声を出さずにフニャっと笑って静かにソファーに
座った智にぃ。
和の着替えやら、その他の荷物が沢山。
それから釣りの雑誌も。笑
今回ね、和は喉が痛くて微熱もあるから
ゲームとかパズルとかやりたがらなくて。
でも「ひま…」って拗ねてて。
そしたら智にぃが釣り雑誌を見せ始めたんだ。
智にぃの釣りエピソードも交えた解説が
面白いらしくて。
今はそれが、和にとって唯一の楽しめる時間に
なっている。
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作者名：空
| 作成日時：2014年10月3日 6時
