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［翔にぃside］
体温計のことがあって
2.3日後。
智にぃの行動を気を付けて見るようにして
見守っていた俺らは、いくつかの異変に
気が付いた。
智にぃは元々、口数が多い方ではないけれど
必要な時にはビシッと決めてくれる人。
それがなくなって遠慮がちというか、余計な事を
言わないように…そんな感じがする。
それから、あまり笑わなくなった。
優しいフニャッとした笑顔もなくなって
不安そうな表情をしていることが多い。
でも今は各々が自分の事で精一杯。
智にぃのフォローまでは手が回らなくて
その結果、放置してしまうことになって…
俺は智にぃに頼って沢山助けてもらったのにね。
精神的なものには早めに手を打とうと思って
いるのに、結局それが出来なかった。
「智にぃ？大丈夫…？」
智「…あぁ。ん…」
『そろそろまずいな…』
そう思って声を掛けた時には、手遅れ…
智にぃは自分が「大丈夫か」「大丈夫
じゃないか」
それすら分からない状況に陥っていて。
自分でも気が付かないうちに、心に大きな
不安を抱えてしまっていたみたい…
智「…、ごめん」
「んーん。俺らこそ、ごめん…」
ハッとした時、「ごめん」って口にする智にぃ。
その様子を双子は黙って見つめている。
智にぃにとっての不安は兄弟がバラバラに
なってしまう事。
誰かを失う事。
話たがらない智にぃの代わりに、俺が
カウンセラーと話をした。
両親の事故までさかのぼってケアをしていく
必要があるかもね…ってことで。
確かに、あの時から智にぃは「長男」として
頑張ることが多かったのかもしれない。
泣きたいのに我慢して、俺らを支えてくれて
いたから。
感情を表に出す機会が自然と少なくなって
しまっていたんだろうね。
智「…いよ、俺は平気。ここに、居たい」
「今日は雅紀に任せよう？」
智「…んーん」
智にぃの負担を減らす為に、夜の病室の
付き添いは雅紀に任せる。
「俺が」って主張する智にぃの手を引いて
病室を出るんだけど、そうすると今度は
携帯を気にして落ち着かない。
いくら「和は大丈夫」「体調良いから」って
伝えても…
「智にぃパジャマは？」
智「すぐ、出られるようにしておかなきゃ…」
風呂から上がっても服を着てしまう。
こんなんだったら病院に居た方が良いんじゃ
ないか…って、俺らは悩んだけど。
カウンセラーは「少し病院から離してあげる
時間が欲しい」って。
今はそれを信じるしかなかった…
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作者名：空
| 作成日時：2014年8月7日 12時
