1521.【21】目覚め… ページ21
［和side］
長い長い…
とても長い夢を見た。
そこには、みんなが出てきて笑ってて。
夢なのか現実なのか分からなくなってしまう…
そんな不思議な空間だった。
苦しさも辛さもなくて、感じるのは人の温もり。
優しさに包まれて幸せな時間を過ごした気が
する。
それなのに、いざ目を開けたら苦しいこと
だらけの現実。
大嫌いな挿管をされている苦しさ…
体中から感じる痛み…
『駄目だ…耐えられない…』
そう思って幸せな空間に逃げようとした時、
夢の中とは全然違う、確かな温もりに触れられて
「かず」って名前が呼ばれる。
あれ…
全然ちがう…
さっきまで幸せって感じてたけど、この方が
ずっとずっと幸せ。
自然と溢れてくる涙を止めることもできず
パチパチと瞬きをしたら、大好きな人達の顔が
目の前に現れる。
智にぃ…
翔にぃ…
雅にぃ…
潤…
あ、先生も…
それにしても、俺の体はどうしちゃったん
だろう…
触れたくて手を伸ばそうとするのに、力が
入らない。
翔「今ね、挿管外すからな…」
目の前の翔にぃが話しているのに、聞こえて
くるのは、微かな声で…
薬のせいで、まだボーッとしてるのかな。
翔「すぐ抜いちゃうからね…」
抜管は苦手だけど、今は顔すら動かせなくて。
鉛のように重たい体に不安を覚える…
それでも感じる、管が喉を通る気持ち悪い感じ。
「…っ、おぇっ…」
翔「ごめんな、抜けたから。ちょっと我慢な？」
そのまま吸引のカテーテルが口の中に…
「…っ、やっ…おえっ…」
翔「ごめんな〜」
「…っ、んっ…っ、…っん…」
苦しくてカテーテルから逃れたいのに体が
動かせなくてされるがまま。
涙がポロポロ零れてしまう…
翔「ごめん、ごめん。目覚めて早々、嫌なこと
ばっかりだもんな…」
翔にぃが涙を拭ってくれて、ちょっと落ち着く。
翔「もうやらないから。な？ほら、手握って
もらおうね」
智にぃが胸元をさすってくれて、潤と雅にぃが
それぞれ手を握ってくれた。
『えらかったね…ほんとによく頑張ったね…』
みんなが口々に褒めてくれて。
俺は3週間以上も意識がなかったことを知った。
その間、にぃ達や潤がどんな気持ちだったのかを
考えたら申し訳ない気持ち…
でも、この本物の温もりの中にいられるのは
最高に幸せで…
智「ん…？」
目の前にいる智にぃに目で訴える。
『もっと傍にいて…』
『ギュッてして…』
智にぃはフニャッと笑いながら、翔にぃに
確認してくれてる。
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作者名：空
| 作成日時：2014年8月7日 12時
