1913.【8】 ページ13
［和side］
『優しい先生』って
思おうとしたけど…
それよりも先に『恐い』って思いが頭の中を
埋め尽くしてしまったから、もう無理。
何もかもが恐くて、ただただ泣いて叫んだ記憶しか
ない。
智「かーず…おしまいね」
いつから声を掛けてくれてたんだろう…
パニックから抜け出した俺の耳に届いた優しい声。
胸元をさすってくれる手に包まれた手を感じて
向きを変えて、お腹にくっ付く。
智「ふふ…よく頑張ったね」
「…んっ…」
『頑張ったとは言い難い状況だったんじゃない？』
そう思いつつも、思いっきり甘えさせてもらう。笑
心地好いリズムで背中をポンッ…ポンッ…って。
よくよく耳を傾ければ、診察室の隅で先生と
翔にぃが話をしているのが聞こえてきて…
翔「あ、かず。よく頑張ったな…」
優しい翔にぃの声が聞こえてきた。
「…っぱい、…んばったから、…ゅって…」
翔「はは！いいよ、おいで…」
素直な言葉が飛び出したら、翔にぃは躊躇わず
ギュッとしてくれる。
先「いいな、弟。可愛いですね」
翔にぃの腕に包まれながら頭の中で『でしょ？』
って得意になる。笑
翔「ん、可愛い時もあるけどな。笑」
「ぶぅ…んぅ〜…」
翔「くはっ！冗談。いつも可愛いよ」
［翔にぃside］
からかってはいるけどさ、ほんとに可愛いと
思ってる。笑
まぁ、それは言えないけどね。
でもよく頑張ったから、沢山褒めてやらないとね。
そんな意味も込めて「一緒に入ろ？」って誘いを
断らずに受け入れたんだけど…
和「ふふ…翔にぃ、塗って？」
「…っ、はぁ？」
風呂上がりに塗り薬を差し出したら
俺に塗らせようとしてくる。笑
「自分で塗れ。それか智にぃに頼め！」
和「ケチ〜♪ 変なこと考えてんでしょ？笑」
「…っ、ばか！」
和「いいもん。えっち〜♪ 笑」
医者モードのままだったら、いくらでも塗るけど
今はちょっと自信ない。
診察を終えた後から和を『可愛い弟』として
見てしまっているから。笑
和「いいもん！雅にぃ〜、塗って〜？」
雅「えっ、珍しいじゃん！任せて〜」
和「きゃはっ！ありがと！
翔にぃ、えっちなんだもん！」
雅「あひゃ！知ってる！昔からだよ〜？笑」
あいつら…
でも今は自然体で居られる雅紀が羨ましかったり
するけど。
和はソファーに座って雅紀に薬を塗って
もらってる。
そんなオープンな所で塗らなくてもね。笑
でも和の「優しい先生のとこ連れてって
くれたんだよ？」って言葉が嬉しい。
END
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作者名：空
| 作成日時：2015年6月28日 7時
