1912.【7】 ページ12
［智にぃside］
知らない先生は
和にとって、やっぱりハードルが高かった…
『恐い』って思ってしまったら簡単には
抜け出せないから、強行突破でいくしかない。
先生もそう思ってくれたみたいで、手袋を
着けながら「和くん？すぐ終わらせるね」って
声を掛けてくれた。
和「…や、…らない、…らい、きらい…」
ブンブン首を振って大粒の涙を零して
和は拒否の気持ちを俺らに伝えてくる。
でも、診察しないわけにいかないから…
「ごめんね、かず。これだけ頑張れ…」
パニックになりかけてる和を後ろから抱え込んで
動きを抑制する。
和「…っ、…や、…んっ、ん…」
翔「ん、嫌だね…少しだけ、ごめんな？」
翔がズボンに手を掛けたら大きくなる泣き声。
捩って逃げようとする体を抱え直す。
先生も心配そうに見つめていて、診察室の
空気は重い…
そんな中で翔が「あ、このパンツ。笑」って
手を止めて。
「お気に入りって、これだったんだね。
嬉しいや。笑」って。
和の今日のパンツはスマーフ。
翔が入院中の和にプレゼントした物だね。
翔「はは！やっぱ似合うな、お前。笑」
後「はい、良いですね。笑」
和「…っ、ん…、…がな、い、…ない…」
場の雰囲気が和んでも「脱がない」「しない」って
泣いてるけど。
でも、さっきよりは遥かに良い雰囲気。
翔に感謝だね。
和「…っ、ん…、…わい、こわ、い…やー…」
近付いてくる先生の手を必死になって追い払うから
手を捕まえてお腹の上で抑えておく。
翔は足を軽く抑えてくれて「大丈夫。何にも
嫌なことしないから」って何度も伝えてくれてから
先生に合図。
後「あ〜…これは辛かったね」
視診した先生が一言。
和は「嫌だ」「もう終わり」って。
後「少しだけ触らせてね？それで終わり」
和「…んっ、…め、だめ、…っやー…」
手袋をした先生の手が触れたもんだから
もうパニック。
和「ぎゃー」
翔「ごめん、智にぃ…大丈夫？」
「ん、大丈夫」
逃れることしか頭にない和は、ものすごい抵抗。
でも、これが和の感じている恐怖の大きさ
だから。
俺らもしっかり受け止めてやらないとね…
翔は俺に声を掛けつつ、先生にも「続けて
大丈夫」って指示。
和「…っ、ぎゃー」
「だいじょうぶ、大丈夫…」
お腹の上で抑え込んだ手を握り直して
少しだけポンポンってしてみる。
この状況じゃ、効果はないと思うけど。
こうでもしてないと、たった10秒ちょっとの
触診がさらに長く感じるから…
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作者名：空
| 作成日時：2015年6月28日 7時
