978.【4】 ページ28
［智にぃside］
朝起きて、
身の回りの世話をして
何気なくゴミ箱に目をやる。
「あれ？Tシャツ落ちちゃってる。ほら。」
俺はてっきり、ベッドサイドに置いてあった
クラスTシャツが、ゴミ箱に誤って
落ちちゃったんだと思ったんだ。
でも和は、俺の手からTシャツを奪い取って
「捨てたんだから、拾うな、バカ！」って。
バフッてまたゴミ箱に投げ入れた。
気持ちは分かる。
でも、一時の感情だけで大切な物を
失って欲しくなくて。
後でゴミ箱から拾っておこうと思って
黙っておいた。
翔「おはよう、かず。調子どう？」
和「…ふつう」
その後すぐに様子を診にきてくれた翔も
ゴミ箱の中身に気が付いて、パッと視線が合う。
黙って首を振ったら、理解してくれたみたい。
翔「かずー？音聴かせてね〜…」
そのことには触れずに診察を始めてくれた。
しばらく黙ってた和だけど、突然「退院したい」
って言い始めて…
翔「ちょっと、待って？診察終わってから
話聞くから」
翔が声を掛けてくれたけど「やだ、今」って
ベッドから降りようとしてる。
翔「無茶言うなって。かず？」
和「…なせ、ばか！」
翔「駄目。降りないよ。」
降ろそうとした足を戻されて、本格的に
和の機嫌が悪くなってきた。
翔「苦しくなるから。な？落ち着こう？」
「おいで。後で聞いてもらおうね…」
和「ん〜…」
布団をバサッと被せて抱き寄せる。
必死になって逃れようともがいてるけど、
翔も軽く抑制してくれてるから敵わない。
だんだん元気なくなってきて、そのまま
スーッと眠った和。
翔が少しだけ薬を入れてくれたみたい。
翔「あのね？木曜か金曜には退院は可能…
ただ、土曜日の文化祭には行かせてやれないから
それなら土曜日まで入院させておいた方が
気が済むのかなって気もする…。どう思う？」
「…ん〜、難しいねぇ…。
病院だと気が休まらないから、退院させて
あげたい気持ちもあるけどねぇ…」
でも退院してるのに「我慢しなさい」って
言うのは、大好きな物を目の前に突き出して
我慢させるのと同じ気がする。
病院にいれば諦めがつく部分も、少なからず
あるからね…
翔「和に任せていいのかな…？」
「そうだね…聞いてみようか。」
俺らは目覚めた和に選んでもらうことにした。
どっちを選んでも和の苦しみは
変わらないかもしれない。
初めての文化祭に、参加できないって事実は
変わらないから。
それでも、俺らは和の意思を尊重してやりたい…
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作者名：空
| 作成日時：2013年10月23日 6時
