936.【9】 ページ36
［智にぃside］
優しく声を掛けた翔が
処置を始める。
和は苦痛に顔を歪めるけど
足をバタつかせることもなく耐えてる。
ちょっと引き気味になる腰も
少し支えてやる程度で大丈夫だ。
翔「えらいね、かず。力入れてごらん？」
和「…ん、ん」
翔「そうそう、上手。」
焦らずゆっくりと…
翔は「なるべく和に協力してもらいながら
処置したい」って言ってたんだ。
そうじゃないと、全て強制になっちゃって
苦痛しかなくなっちゃうからって…
翔「お腹にギューッて力入れてごらん？」
和は「…むり」ってフルフル首を振る。
翔「ちょっと押してもいい？」
和「ん…」
ここまできたら翔に助けてもらうしかないって
和も分かってるんだろう。
今までだって、ずっとそうだったもんね。
それでもやっぱり苦痛に心は折れる…
処置が始まってから潤んでいた目からは
ポロポロ涙が零れ始めて…
和は自分でタオルをギュッと顔に
押し付けてる。
翔「痛いね…ごめんな〜」
和「…っ、ん…」
翔「お腹ギュッてするから
和も力入れてくれる？」
和「ん…」
辛いだろうに、和はコクンと首を動かして
少しでも協力しようとして頑張ってる。
「いいこだね〜」
褒めて励ますことしかできなくて悔しい。
和の本当の苦痛は分かってやれないし、
「少しでも早くラクにしてやりたい」って
翔の焦る気持ちも分かってやれない…
「自分にできることをしよう」って
いつも言ってるけどさ、やっぱりこういう時に
何の力にもなれないのは悔しい…
翔「苦しくなったら教えて？
ちゃんと息しててよ？」
和「…んっ、ん…」
「ゆっくりね〜」
和「んっ、…ん」
和は俺らの声掛けに答えようと一生懸命だ。
和「…っ、ん…、…たい、いたい」
翔「ん、ごめん、ごめんな」
和の呼吸と様子を見ながら
処置を進めていく翔。
和「…とにぃ、…たい」
和の手が服の袖をギュッと掴んでくる。
汗もビッショリかいてかなり辛そうで…
ポロポロ流れる涙も止まりそうにない。
翔「かず…？痛いけど、上手く
できてるから。な？もう少し…」
和「んっ、う…、…たい、よ…」
翔が指を動かす度に苦痛の声を出して
少しずつ拒否反応も出てきた。
嫌なこと、苦痛から逃げたいと思うのは
本能だから仕方ないよね…
抑制するのは気が引けるけど、処置の妨げに
ならない様に、足をしっかり固定する。
翔の口が「ごめんね…？」って動く。
翔だって辛いのにね。
抑え込む俺の方がラクなのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 610人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2013年9月28日 14時
