920.【雅にぃの苦手なもの】 ページ20
［翔にぃside］
雅「じゃあね、翔にぃ。
仕事頑張ってね？」
「ありがとな！」
当直だから智にぃにお弁当作ってもらったのに
忘れちゃった。
そしたら雅紀がわざわざ届けにきてくれて。
せっかくだからさ、少しだけ屋上でお茶して
雅紀をエレベーターの前まで見送ったんだ。
まさかね…このエレベーターが
停まってしまうなんて思いもしなかった…
笑顔でエレベーターに乗り込んだ雅紀に
手を振って仕事に戻る。
1時間くらい経ってからかな、智にぃから
「いつまでお茶してんですかぁ〜？笑」って
メールが来て。
俺は雅紀が家に帰ってないことを知った。
でも確かにあいつは「夕飯までに
帰らなきゃ！」って慌ててた。
どこかに寄り道するような雰囲気でも
なかったし、だとしても連絡はいれるだろう。
連絡してみるも電波なし…
智「また充電切れてるとか？笑」
まぁ、色々なケースが考えられるんだけどね…
とりあえず智にぃと電話で話してたら、
ふと研修医が飛び込んできた。
研「翔先生！エレベーターに閉じ込められて
救急に運ばれた患者さん、
雅紀さんみたいです」
「へ？」
そもそもエレベーターが停まったことすら
知らなかったし。
雅紀とエレベーターが上手く繋がらない…
俺は「早く！」ってグイグイ手を引く研修医に
引っ張られて救急まで連れてこられた。
診察台に寝せられているのは確かに雅紀…
顔馴染みの看護師さんが移動中に気が付いて
くれたらしい。
看「まさか雅紀くんだと思わなかったから…
連絡が遅くなってごめんなさいね。」
「怪我してるんですか？」
看「怪我はないみたい。
ただ…状況が掴めなかったみたいでね、
診察できなかったから…」
鎮静剤で眠らされたってことは
診察を拒否して暴れたってことで。
俺はこれにも納得がいかなかった…
和なら分かるけど、雅紀が自分を助けて
くれようとしているのに拒否する理由が
分からない。
看「…翔先生？大丈夫？
あっちで詳しく話してもらえるみたいだから」
そう促されるまま、俺は黙って話を聞いた。
運転停止した後、電気が消えたこと。
エレベーターは地下まで降りた状態
だったこと。
外部の職員からは「尋常じゃない恐がり方で
指示や質問にも答えることができなかった」と
伝えられた。
『何かトラウマはありませんでしたか？』
念のために来てくれた精神科医に
質問されたけど思い当たることがない…
とりあえず鎮静剤も使用したから
雅紀は今晩だけ入院することになった。
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作者名：空
| 作成日時：2013年9月28日 14時
