888.【2】 ページ38
［潤side］
部屋に入って
クッションを
カレンダーに向かって
思いっきり投げつける。
3日前のフットサルの試合。
みんなで応援にくるって言ってたのに…
分かってる…
和の急な体調不良で余裕が
なかったことくらい。
水曜日辺りから体調を崩した和は
そのまま寝込んでしまって、当然試合の
応援なんて来れる状況じゃなかった。
兄貴達も付きっきりだったから
試合に来れないだろうなとは思った…
でもさ、約束してたんだから
忘れることないじゃん。
せめてさ「頑張れ」の一言が欲しかった…
なのに、いつものフットサルの時と同じ様に
「いってらっしゃい！」って送り出されて。
「試合だから、午後までかかる」
「お弁当持っていく」
この二言をあえて言わなかったのは、
それでも、どっかで期待してる気持ちが
あったから…
家に3人もいるんだから、誰かしら気が付いて
お弁当を届けてくれるんじゃないか…
応援に来てくれるんじゃないか…
そんな淡い期待を抱いて、必死になって
ボールを追いかけた。
でも結局、俺の期待は裏切られて…
挙句の果てには「練習、午前中だろ？」
「真っ直ぐ帰って来ない時は、連絡して？」
って、帰宅が夕方になったことを叱られた。
こんな時だけど勝ったから、来週も試合。
そのことも兄貴達に話してあったのに…
これぽっちも話題にでない。
雅にぃなんて「じゃあ、2週連続で応援だね」
って張り切ってくれてたのにさ。
リビングのカレンダーに印のシール貼って
「頑張れ！」って言ってくれたのは
翔にぃなのに…
みんな俺のことなんて忘れてんだ…
俺はクッションに顔を押し付けて
思いっきり叫ぶ。
何度も何度も…
こうでもしないと頭がパンクしそうなんだ。
誰のことも恨んでない。
誰かが悪いとも思わない。
ただ、こんな些細なことでイライラする
自分が堪らなくムカツクだけ。
忘れられた気がして寂しいだけ。
遅くまで帰宅しないのは、家に帰ると兄貴達に
八つ当たりしてしまいそうだから…
時間を潰してるだけ。
部屋で思いっきり不満を吐き出したら、
一人、ゆっくり風呂に浸かって
気持ちが落ち着くのを待つ。
こんな汚い心のままじゃ、和に会うことが
できないからね…
それで、そっと部屋を覗くんだ。
「かず…寝てる？」
和「…」
「寝れてるね…」
時折、顔を歪ませながら苦しそうに眠る和が
可哀想で…
そっと手を握ったら、びっくりする程熱くて…
今は、元気な自分の存在さえ腹立たしい…
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作者名：空
| 作成日時：2013年9月6日 7時
