873.【3】誤嚥 ページ23
［翔にぃside］
部屋を出ていく智にぃを
目で追っていた和。
黙って俯いたまま「へーき…だから」って
呟いて布団に潜った…
「かず？みんな心配してるの分かるだろ？
それにさ、一番不安なのは
お前なんじゃねーの？」
和「…」
「分かったよ…」
和「…」
「話したくなったらでいい。」
和「…」
和がここまで頑なになっている時は
もうどうにもならない。
それに、今回はさ…自分でもどうしたらいいか
考えて苦しんでるみたいだから…
だって今、和は俺に背を向けたまま
背中を震わせて泣き出してる。
相談したい気持ちと、検査とか治療に
対する恐怖が闘ってるんだと思う。
背中を小さく震わせて、声を殺して泣く和が
可哀想で、見てられなくて…
俺はそっと手を当てて
落ち着くまで背中をさすった。
智「どうだった？」
だいぶ時間を空けて様子を見にきてくれた
智にぃ。
「さっきね、寝たとこ…」
俺が伝えたことに黙って頷いてた智にぃは
「泣けたなら、よかったんじゃない？」って
笑ってくれた。
キュッと丸くなったまま寝てしまった和の
体を、智にぃと協力して仰向けに直す。
涙の痕を、そっと指で拭って頭を撫でる。
「俺さ、もう少しここにいたい…」
智「うん、分かった。部屋で仕事してるね〜」
智にぃを見送って和の手を握る。
手の甲には前回の点滴の痕が、
まだ薄っすらと残っていて…
また泣かせるんだろうか…
また苦しめるんだろうか…
また痛い思いさせるんだろうか…
「ごめんな…。」
こんな時、謝ることしかできない自分が
無性に情けなくて仕方ない。
これ以上傍にいたら泣いてしまう…
そう思って背を向けた時、
急に和が苦しそうな声を上げた。
振り向くと、俺に手をのばす
和がいて、必死にもがいてる。
一瞬「発作かな…」って思ったけど
和が口元に手をのばしたのを見て
嘔吐物が詰まったのかもって思って。
コールボタンを押しながら
和の顔を横に向けたら案の定、
少しだけど口から吐き出してくれた。
「かず、大丈夫だから。」
「ちょっと体起こすよ？」
駆け付けてくれた雅紀に、
後ろから抱えるように支えてもらう。
潤「…はい、洗面器。まだ、吐くの…？」
潤は涙目になりながらも洗面器を口元に
当ててくれた。
「かず？もう少しラクにならないと辛いから
ちょっと頑張って出しちゃうよ？」
まだグッタリして反応が悪いから、
このままにしておくのは危険。
とりあえず吐かせることを優先する。
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作者名：空
| 作成日時：2013年9月6日 7時
