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［翔にぃside］
声を掛けてる間は
いくらか落ち着いてた
和だったけど…
処置が始まれば
また泣き叫んで、体を動かそうと必死だ。
こうなったら、俺にできるのは
とにかく早く終わらせてやることだけ。
和「ぎゃー」
大きく乱れる呼吸に少し焦りを感じながらも
看護師さんにサポートしてもらって
何とか処置を続けていく。
和「ぎゃー」
「もうすぐ終わりだから…」
和「ぎゃー」
テープでしっかり固定して
きちんと入っているか確認する。
智にぃに目をやったら、ニコッと笑って
頷いてくれて…
涙が零れそうになって慌てた。笑
まだ、やらなきゃいけないことが
沢山残ってるのに、泣いてたら笑われちゃう。
まずはチューブを抜かないように
言い聞かせないといけないから
手の抑制はそのままで、顔のタオルだけ
外してもらった。
先「頑張ったね、おしまいだって」
先輩が涙を綺麗に拭いてくれても
和はブンブン頭を振って怒ってる…
「かず？分かる？…おいで」
焦点の定まらない目でキョロキョロした和は
俺をじっと見つめてきた。
「かず…おしまいね。おいで？」
声を掛けながら両手を広げて待つ。
和「…う、にぃ…」
時間はかかったけど、俺を認識してくれた和。
俺の合図で看護師が抑制の手を離してくれる。
和はピタッと胸元に張り付いてきた。
しゃっくり上げて泣き出した背中を
ゆっくり、ゆっくりさすってやる。
その間にテキパキと片付けをしてくれた
看護師達は静かに無菌室を出ていって、
先輩だけがサポートで残ってくれた。
「かず？無理矢理でごめんな…」
和「…わい、こわい…」
「もう恐くないよ？」
和「…って、とって…」
カテーテルを触ろうとする手を
優しく握って目を見て言い聞かせる。
「このカテーテルは外しちゃいけないよ？」
「大事な大きな血管に繋がってるからね？」
「和が元気になるために
必要なカテーテルだからね？」
首を振って、ポロポロ泣いてた和は
だんだんと落ち着いてきて
俺を見つめてコクッと頷いてくれた。
「いいこだね、和。」
先「頑張れてえらかったね〜」
先輩も頭を優しく撫でてくれた。
和「…ん、せ、…、あ、りが…う」
先輩にもお礼を伝えられた和。
智にぃはその姿をガラスごしで
そっと見守り続けてくれてる。
汗でビッショリの服を着替えさせて
体を拭いてやったらスースーと
寝息を立て始めた。
その寝顔は無菌室に入ってから
初めて見せるホッとした寝顔。
また一つ乗り越えたね…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
