806.【6】中心静脈管 ページ6
［智にぃside］
無菌室での
管理が始まって3日目。
雅紀を仕事、潤を学校へと
それぞれ送り出して面会へ。
和は無菌室に入ってから、まだ一度も
俺らのことを見てくれてない。
ださら俺らはただ、自分と葛藤する和を
静かに見守ることしかできずにいた。
そんな状況でも、和の処置は進むわけで…
ご飯も食べられないから高カロリーの
輸液を入れることになったらしい。
「…え？鎖骨？
腕の点滴じゃダメなの？」
翔の説明を聞いていて、思わず不安になる。
胸に針なんか刺すことに和が耐えられるとは
思えなくて。
翔「うん、今回はこれが最善策」
でも、翔が和のことを思って考えてくれた
一番いい方法なんだっていうのは分かる…
翔「寝てる間にさ、麻酔のシール貼って
おいたから。麻酔の注射は前みたいに
見えない様に打ってやって、そのままチューブ
入れちゃう。」
「大丈夫かな…？」
翔「いや、嫌がるとは思うけど…
でも、今回はこれだけは頑張ってもらわないと
体力も回復しないし…」
翔は不安そうな顔をしながらも
「一応、話してからやるからさ」って呟いた。
俺はガラスごしに様子を伺う。
ほんとはね、翔に「見てるの辛いだろうから
終わったら呼ぶから」って言われたんだけど…
和と翔が頑張ってる姿を、
きちんと見ておかなきゃって思って。
だから、何も出来ないけど黙って見守る…
翔が何か話し掛け、和がフルフルと首を振る。
そんなことを何度も繰り返した後
翔の手がナースコールのボタンを押した。
「処置を手伝ってくれるのは先輩だから
安心できる」って翔が言っていた通り。
先「すぐ終わらせるからね。
ちょっと辛いと思うけど、応援しててあげて」
先生は俺の肩をポンポンと叩いて
優しく笑って無菌室へと入っていった。
それに続く3人の看護師さん。
みんな優しく笑って頭を下げて…
和だけじゃなくて、俺らはみんな
この病院のスタッフさんに助けられてる。って
改めて実感。
無菌室に目をやると泣き出した和と
抱きしめる翔が見えた。
起き上がろうとする体を看護師さんに
抑えられ、翔が優しく何かを伝えている。
それでも泣いて体を起こそうと暴れる和。
抑制を振り切って、
何かを叫んで訴えた和と目が合った…
和は逸らすことなく俺に向かって
泣いて訴えてる…
「たすけて」
「いやだ」
「さとにぃ！」
和の声が、そんなに大きくないけど
聞こえてきて、
俺は精一杯の笑顔で「応援してるから」って
伝えた…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
