848.【体は不良品…】 ページ48
［智にぃside］
雅「食べたくないって
言ってるけど…」
翔「ちょっと診てくるわ…」
そんな会話があって数分後、翔がビリビリに
なった紙切れを持って和の部屋から出てきた。
翔「潤？これ配られたの今日？」
潤「あ、うん。」
どうやら先日行われた、学校での健康診断の
結果らしい。
翔はテーブルの上でビリビリになった紙を
繋げ始める。
身長、歯科、視力、聴力…
これら以外の項目には全て
『改善が必要』か『要受診』の文字。
翔「…そりゃ、嫌にもなるよな…」
翔は分かり切っている結果に肩を落とす。
健康診断の日、翔は和に「病院で検査
してるから登校しなくてもいいよ」って
言ったんだ。
白衣の人も沢山来るし、和が良い思いを
しないことも、分かり切っていたから。
でも和はフルフル首を振って「いく」って。
健康診断を終えて帰ってきてからは
特に変わった様子はなかったから
気にとめてなかった。
やっぱり行かせなきゃよかったのかな…
「何か話せた？」
翔「いや、何も…たださ、ゴミ箱に
捨ててあったから…」
「そっか。ちょっと話してくるね。
みんなは先に食べてて？」
頷いてくれたみんなに「大丈夫だよ」って
笑ってみせてから和の部屋に…
ベッドの上で小さくなっている和は
頭まですっぽり布団に潜っている。
「かず？どうした…？」
ベッドサイドに腰掛けて、なるべく優しく
背中に触れて声を掛けてみる。
和「…」
「出ておいで…？」
和「…だ」
「ん？」
和「や…」
小さく震え始めてしまった和の背中。
泣いてるんだろう…
分かっていたとはいえ、結果を見て
色々と思うことがあるはずだから…
「かず…？となり、入ってもいい？」
掛けてやれる言葉なんて何もない。
ただ、和の気持ちに寄り添いたくて…
和は「いいよ」とは言わないし、頷くことも
しないけど、丸まった背中をちょこっと
のばして、俺にスペースをくれた。
「ふふ…ありがと…」
そっとベッドに潜り込んで、背中側から
静かに和を包み込む。
大きくなったと思っていたけど
まだまだ腕の中にすっぽりおさまる和が
可愛くて愛おしくて…
和「…っ、んっ、…っ、ん…」
何も言わないけど、震える背中から
伝わってくる和の気持ち。
今までに何度、代わってやりたい…と
思ったか。
こいつは、この小さな背中で
どれだけ沢山のものを背負って
生きてるんだろう…
何度、悔しい思いをして泣いたんだろう…
俺は和の温もりを感じながら、
一人静かに考えた…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
