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［翔にぃside］
上手く
落ち着いてくれた和。
ベッドに寝かせて、無菌室に移動の
準備を始める。
涙の跡が残った顔を綺麗に拭いてやって
「頑張ろうな」って声を掛ける。
和に掛けた言葉なのか、自分自身に
伝えたかったのか、もう分からない…
だけど、そっと撫でた頭からは
変わらず和の温もりが伝わってきて
「守ってやりたい」って強く思う。
先「和くんと、翔くん達家族なら
乗り越えられるから。自信もてよ？」
先輩は準備しながら、いつもより優しく何度も
励ましてくれて。笑
先「目覚めて落ち着くまでは、翔くんが
傍にいてあげなね。」
最後は優しく笑って無菌室から出ていった。
和「んっ、ん…」
「かず？分かる？」
和「…」
魘され始めたから声を掛けたら
目を開けた和。
ボーッとした目がチラチラ俺を捉えるけど
すぐに力なく閉じられてしまう…
「ゆっくりでいいよ。ずっと、いるから…」
和「…」
「だいじょうぶ…こわくないよ。」
ポロポロと頬を流れる涙をそっと拭う。
騒ぐほど泣く体力はもう残ってないんだろう…
それ程に強い薬を体の中に入れたからね。
「かず？分かる？誰？」
和「…し…に…」
「うん、そうそう。大丈夫だから。な？」
手を握って胸元をさすって…こんなこと
くらいしか出来ないけど。
でも俺が和に触れていたいから…
和「…たい」
「うん。出たいね。元気になったらな？」
和「…えな、い…？」
「そうだね、ここの部屋には入っては
もらえないけど…」
和「…んっ」
「でもね、あそこに来てくれるから
毎日会えるよ？それにね、これでお話も
できるよ？」
和「んー、いい…」
内線の受話器を見せてやったけど
和は顔を背けてしまった。
そんなすぐに、この状況を受け入れるのは
無理だろう。
いくらでも待つし、何だって力になるから…
だからどうか…和が苦しむ時間が
減りますように。
そう願うことで気持ちが少しだけ落ち着いた。
「ほら、きてくれたよ？」
夜になって智にぃ達がガラス越しに
会いにきてくれたけど。
和「んっ…いい…」
和はみんなのことを見ようとせず
目をギュッと瞑ってしまった。
姿を見てしまえば、別れが辛くなる…
そう思っているのか、和は結局一度も見ず、
受話器から聞こえる声にも
耳を傾けることなく面会を終えた…
和「…べた、くな…」
出された無菌食にも、手をつけてくれず。
和は「出たい」「帰りたい」って
泣きながら、鎮静剤で眠らされた…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
