837.【5】 ページ37
［翔にぃside］
俺が和の担当医を
やめるって
宣告した日の夜、
和はストレスから
39℃を超える高熱を出した。
代わりに担当医を頼んだのは後輩の医師。
後輩は「翔さんの選んだ答えなら何も
言いません。責任もって担当させて
頂きます」って快く引き受けてくれた。
後「原因分かってる熱なので
解熱しなくていいですよね…」
「ああ。」
後「いってあげなくていいんですか？」
「ああ。」
後「じゃあ、何かあったら言って下さいね」
和にはいつも通り智にぃが
付き添ってくれてる。
潤は歩に謝りに行った後
俺にも泣きながら謝って…
夕方、雅紀に連れられて帰っていった。
今日は当直じゃないけど、何となく帰る気にも
なれなくて…
医局で一人ボーッとしていた。
先「和くんと喧嘩したんだって？」
いきなり目の前に現れた先輩。笑
「智にぃから聞いたんですか？
喧嘩じゃないですよ…」
先「知ってる。一方的に怒鳴ったんだろ？」
「違いますよ！…違くないか…」
勢いよく否定したものの、一方的に
叱ったことを思い出した…
「…俺、間違ってますか？」
先輩は「はは！自信ないのか？」って笑って
コーヒーを差し出してくれた後、
急に厳しい顔つきで俺の向かえに座った。
先「間違ってる」
「…え…」
先「翔くんは間違ってると、俺は思うよ？」
「…」
想定していなかった答えに頭の中が
真っ白になる。
先輩は俺の目を捉えたまま話し出した。
先「歩くんに意地悪した罰のつもりで
担当医から外れたんだろ？」
「…はい」
先「でも、和くんからしたら、ただのヤキモチ
なんだよ？お前がいくらみんなの先生だって
言ったって、和くんにとっては
お前だけが先生なんだから。」
「…」
先「大好きだからこそ独り占めしたい。
自分だけの先生で居て欲しい。
それが、そんなにいけないことか？」
「…」
先「泣かされて熱まで出す程、責められなきゃ
いけないことなのか？」
「…」
先「身内が担当医になるってことは
そういう気持ちも分かってやるってこと。
俺はな、そこまで考えてやらずに
担当医になった翔くんに責任があると思う。」
「…」
先「病院の中で心から信頼できるのが
お前しかいない和くんにとって、
歩くんがどんな存在になったか考えたか？」
「…」
先「ヤキモチって片付けないで、
向き合ってやったか？」
先輩の言葉、一つ一つが胸のずーっと奥まで
入り込んでくる…
返す言葉が一つも見つからない…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
