829.【7】 ページ29
［雅にぃside］
「体調どう？
どっか辛い？」
潤「…どこも。触んなっ！」
俺の前では相変わらず尖ってる潤。
でも、触んなっ！って言いながらも
俺が立ち上がると「どっかいくの？」って目で
見つめてくる。
知ってるよ…寂しいんでしょ？笑
翔にぃは担当医じゃなくなったから
休憩時間以外は来てくれないしね。
先「潤くん、どーう？ちょっと触らしてな？」
触診してくれる先生をじっと見つめる潤。
先「着替えようね。雅紀くんが
体も拭いてくれるからね。」
今だ約束できない潤は、着替えが終われば
また腕を拘束されてしまう。
「じゅん？そろそろ抜かないって約束
できるんじゃない？どう？」
潤「…」
潤はすぐに俺から目を逸らす…
先「潤くん？お兄さんと約束してごらん？
いつまでも、このままでいいの？」
潤「…」
先「このままじゃ、和くんにお見舞いに
来てもらえないよ？」
潤「…」
先「潤くんのこんな姿見たら、きっと和くん
泣いちゃうもんね…」
ポロポロ泣き出した潤を見てるのが辛くて
俺は着替えを用意することに集中する。
潤「…くそく、したら…かえれ、る？」
先「約束して、このまま点滴頑張ったらな？
そしたら帰れる。」
潤「…うせ、んせい、みてくれる…？」
先「うん、お願いしてみる？」
潤「…ん、んっ、…てみる」
潤なりに一山越えてくれたみたい。
そう思って振り返ったら、ドアの所から
翔にぃもこっちを見ていて。
先「ほら潤くん。抜かないって約束、
できるんだよな？」
潤「…ん。できる…」
潤は俺と翔にぃを見てコクンと頷いた。
先「それから？」
潤「…。しょ、う先生が、いい…」
潤が言い終わる前に、翔にぃは体を
ギュッと寄せて抱きしめた。
先「よかったね、潤くん。
今日からは、翔先生に担当してもらえるな」
潤「ん、ん…うん。」
翔にぃの腕の中でコクコク頷いた潤。
泣き止んで顔を上げてから、
俺らに「ごめんなさい」って謝ってきた。
全部、分かってたもんね…
和は体調が良くなってから、
ちょくちょく病室にお見舞いにきてくれて。
和「潤、ゲームしよ？」
潤「あ、うん！新しいとこクリアしよ？」
すごく楽しそうな双子の笑い声が
病室に響いた。
いつもと立場が逆転してるけど
お互いを大切に思う気持ちに変わりはなくて。
自分のことも大事にして欲しいと願う反面
本当に優しい子に育ってくれたなって
嬉しくなる…
「翔先生！」って呼ぶ潤の笑顔に
翔にぃの充電は毎日満タンらしい。笑
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
